第12話 最後の言葉

彼女との別れは突然訪れた!


夜の仕事が上手く行かず深夜になるまで残業を繰り返す日々が続き、彼女と会わない日が二週間以上も続いたある日。

深夜の三時に岐阜の繁華街へ迎えに来て欲しいと、彼女から連絡が入った。


私が待ち合わせの場所へ到着すると、近くの交差点で泥酔状態の女性が居た。

それは紛れもない彼女だった!!!


『大丈夫!立って歩けるか?』


泥酔状態の彼女に駆け寄って、車へ乗せようと彼女の腕を掴んで肩で担いだ。

しかし、彼女は私の事が誰だか分からないほど酔っていたので、その場で抵抗をして車に乗せるまで彼女の爪で引っ掛かれたりした。


『誰?誰なの!助けてーーー!!!』


車中でも騒いで大人しくなかった彼女。

でも実家に到着すると冷静さを取り戻してくれた。


『一人で歩ける?』


彼女のことが心配だったので、早朝の時間ではあったが部屋まで彼女を見送ることにした。

そして、部屋に入るなり手紙を渡されて彼女はこう言った。


『別れて欲しいの』


竹を割るような性格の彼女は100%、私のことだけを見ていると信頼をしていた。

だから彼女が私以外の異性と関係を持つには、私と別れてからだと分かっていた。


『なんで?どうしたの?急に!』


後から聞かされた話しだが彼女はホストクラブに通っていた。

お酒が大好きな彼女だから、飲みに行くことは容認をしていた。

でも、まさかホストクラブにハマって私と別れるなんて夢にも思わなかった。


『この手紙を読んでくれたら分かるから…』


そう言って差し出された手紙だったが、その手紙は受け取れなかった。

明日になったら明るく私の事を迎えてくれるんじゃないか?

何故か、その時はポジティブに現実逃避をした私だった。


『お願い!お願い!手紙を受け取って』


でも、その原因を作ったのは紛れもなく私なんですよ!

彼女との同棲生活なんて夢物語を追って、彼女を放置していた私がその結果を作ってしまったんだよ!!!


『もういいよ、分かったから』


そんなどうでもいい言葉が、彼女へ告げた最後の言葉になるなんて…

彼女が一方的に別れの原因を作ったように表現をしているが、私には夜の職場で好意に思うMさんって年上の女性が居てね。

当時、ヒステリックな彼女と居るよりも、私の悩みを聞いてくれるMさんと一緒にいる時間の方が長がったことは間違いない。


『ごめんなさい!ごめんなさい!』


彼女は泣きだして、ただただその言葉を繰り返したんだ。

彼女は誰に?何を謝罪しているの?取り乱す彼女の姿を見て私はそう思った。

何故だか分からなかったけど、凄く冷静に彼女を見つめる自分がそこにはいた。


自分の一番の望みは「彼女の笑顔」なのに、その彼女の笑顔を奪っているのは自分自身なんだって気付いたんだ!

もうどうすることも出来ずに、私は彼女を置いて静かにその部屋を出て行った。


変に空気を読む訳じゃないけど、もう彼女の中に私は存在しないとその瞬間に悟ったんだよ!

そして私の脳裏にはこの曲が流れた…


『I Will Always Love You/ホイットニー・ヒューストン』


『もしとどまっていたら あなたのそばにしかいられない』

『だから私は行くわ でも分かってる』

『あなたのことを 何時も考えるでしょう』

『そして私は いつもあなたを愛してる』

『いつもあなたを愛する』


彼女との別れから立ち直るのに、どれぐらいの時間を費やしたのかも分からない。

でも後に彼女から解放された、本当の自分を取り戻したんだよ。

一生懸命に彼女の理想の男性へ近づこうとしたけど、その全てが『自惚れ』だって気づいた瞬間だった。


でも、思い返せば彼女との出会いに感謝しかない自分が今ここに居るんだよ。

そしてS子に贈る最後の言葉。


『I Will Always Love You/いつもあなたを愛する』


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〖真実の愛〗エピソード③~最後の恋人S子編~ YUTAKA @TETSUO7

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