よくある学生のお話

@Ayanokouji

彩葉

受験間近の彩葉の最近の日課は塾の自習室でアニメを見ること。家にいても親がギャーギャーうるさいし、学校にいてもガリ勉か部活の人しか居ないからつまらない。


遊んでる奴もいるけどそいつらは推薦を貰っているかただのバカしかいないからつるみたくない。

だから衝立があって飲食自由で何時間でもいられる自習室が私の最近の憩いの場。



この間帰ってきた模試の結果が悪くて

『次こんな成績取ってきたら携帯解約するから』と母親が言ってた。

口答えするともっと説教が長引くし、これ以上苛立たせてもっと悪い条件になったら嫌だから絶対にしない。


「なんで私こんなに頭悪いんだろ…」


勉強嫌いなのもあるけど、何かを覚えること全部が苦手。

特に歴史とかなんで覚えなきゃなんないの?今どきネットで調べりゃ出てくるじゃん!過去の過ちを繰り返さないため?何回繰り返してんのよ、私が覚えたって意味ないじゃない!

英語とかほんと意味わかんない。日本語が世界共通語になってよ。日本語さえ正しく話せているのか怪しいのに外国語なんて無理!

体育とか美術とかの方がよっぽど為になる!



勉強しようとしたって全く集中出来ないし、イライラしてお菓子を食べまくる。ストレス発散にアニメやらラノベ小説ばっか見てる。



ストレスが原因か月のものは高校に入ってから痛みが急激に強くなって、肌荒れで顔はボロボロ。運動なんてしてないせいでいつの間にか腹に肉がついてた。



いつまでこの状態が続くんだろ…死んで楽になりたいなぁ…



なんて考えるけど自殺は痛いし苦しいって言うから自分から進んでする気は無い。



そうやってうだうだ過ごしてたら大学受験が終わっていた。



まあ結果は惨敗。本気で勉強してない自分が受かる訳もなく無職のニートになった。



思ったより何も感じなかった。

大学からの不合格の文字も卒業式に渡された証書もアプリで友達から送られてきた集合写真も…



悲しいとか悔しいとか怒りだとか嬉しいとか言う感情を忘れてしまったようだった。

全てがどうでも良かった。早く家に帰ってベッドで寝たかった。



目が覚めて、親と話して志望の大学をひとつに絞り、1番だめな英語だけ1年塾に通う事になった。



家にいる時間が増えた。すれ違うたび勉強しろと怒られて、暇なら家事をしろと言われ、新聞読んで世の中のことを知りなさいと言われ、ゲームを長時間すると携帯没収すると脅された。口論の末、『そんなに嫌なら出てけ!』と言われ、ついに何かがブツッと切れた。



私はその場に携帯を置いて洋服と財布などの荷物をまとめて夜中に家を出た。




初めて公園で野宿をした。カバンに詰めた毛布が薄くて4月の夜にはちょっと足りなかった。でも絶対に家に戻りたくなくて我慢した。

いつ誰が通りがかって通報するか分からず、緊張であまり眠れなかった。



朝の4時位からチラホラとランナーが公園に訪れるようになった。



怪しまれないように家から1冊だけ小説を持ってきていたのでベンチに座って読んだ。3時間位で読んでしまったけれど何度も読んで暇つぶしをした。



人通りが増えると、他のベンチに移動して同じ小説を読んだ。



午後になって緊張が和らぎお腹が空いてきた。今日も、塾が16時からあったが行くかどうか迷っていた。



結局金の無駄遣いをしたくなくてお昼を買って塾の自習室で食べ、そのまま授業を受けた。文房具を持ってきていた私は偉いと思う。



親が塾に来るか、電話があるかもしれないと身構えていたけど特に何も起きなかった。

そのまま帰るのもなんだったので少しだけ自習していった。




その時には頭も冷えていたのでそのまま家に帰ることにした。

でも、やはり玄関から中に進めなかった。

プライドと申し訳なさが並行を保っていた。

夜も更け始め、寒くなり、夕飯を食べに行くか迷っていた時玄関のドアが開いた。


『そんな所にいないで入りな、』


そこに居たのは父だった。

中に入ると母はリビングにいた。



結果から言うと、泣きながら怒られた。家のすぐ近くの公園で一夜を過ごしたと言うと、『探したのに』と言われた。ちょうど私のいる所の手前で引き返したらしい。



全く会わなかったので、探してもなかったのだと思っていたが違ったようだ。



塾には行ったと言ったら出入口に居たが、時間になっても来なかったため、帰ったと言っていた。無駄に真面目だと褒められたのか貶されたのかよく分からないことを言われた。



私は愛されていた。



親に不満をぶつけて心が軽くなったような気がした。それから一気に生活が楽になった。



きちんと勉強をするようになった。成績はあい変わらずあまり良くないけれど、ほんのちょっとずつ良くなって行った。



合格発表日。

パソコンの前に陣取って大学のホームページを開き、時間になるまでじっと画面を見つめていた。



時間になったと同時に入力をした。

何度も何度も受験番号を見直して、確認した。




『合格』




ギリギリだったけど受かった。泣いた。当たり前だが嬉し泣きだ。




前に、進めた。これはきっと私の大いなる1歩だ。もっともっと、辛いことや悲しいことが待ち受けているだろう。




でも、私には私を愛してくれている人がいる。だから怖くない。あとは私が勇気を振り絞るだけ。







最近、愛してくれる人が1人増えた。

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