103
「こ、困ります。明日から生徒会室に行けなくなります」
「ごめん、ごめん。南が来てくれないと困るんだ。今のは忘れて。ちょっと暴走した」
「いえ……」
創ちゃん以外の男子と手を繋ぐなんて、中学校のフォークダンス以来だ。あの冷静沈着な一橋先輩が暴走するなんて……。
ま、まさか……。
一橋先輩がラブレターの差出人じゃないよね?
「一橋先輩は、ブルーの色好きですか?」
「ブルー? 好きだけど? それが何か?」
ラブレターはブルーの封筒だった。
「一橋先輩って、字が綺麗ですよね」
「一応、書道二段だからね」
書道二段!?
ラブレターに書かれた文字は達筆だった。
「さっきから、なに? どうかしたの?」
「いえ、何でもありません」
そうだよね。
一橋先輩も山梨先輩も桐生君も、みんな違うって否定してたし。
やっぱりあの手紙は、私と創ちゃんの仲を引き裂くためのお兄ちゃんの策略かも。
一橋先輩と一緒に駅まで歩いた。一橋先輩と別れ、急に創ちゃんに会いたくなった。
制服のポケットから、携帯電話を取り出し、創ちゃんにLINEを打つ。
【創ちゃんに、会いたいな。】
「よっ、南。今帰り?」
「桐生君。部活の帰りなの? 遅かったんだね」
「南こそ、こんな時間まで何してたの? さっき一橋先輩と一緒だったよね?」
「うん、今生徒会の仕事を手伝ってるの」
「生徒会? サッカー部のマネージャーは?」
「運動部は向いてないから、辞めちゃった。百合野がサッカー部のマネージャーになったんだよ」
「山本が?」
「うん、鈴木先輩もマネージャーを辞めたから」
「どうして?」
「恋のキューピッドだよ」
「は? なにそれ? 鈴木先輩はサッカー部を牛耳っていた敏腕マネージャーだよ。新人の山本に務まるのかな。あっ、そうだ。俺、今から原宿のショップに行くんだ。南も来ない?」
「今から? でも……」
「いいじゃん。新しいアクセサリー入荷したんだよ。見においでよ」
「新しいアクセサリー? わぁ見たいな。ちょっとだけ行こうかな」
創ちゃんからLINEの返信はない。
アルバイトが忙しいのかな。
再び携帯電話を開き、創ちゃんにLINEを送った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます