狼の本性がついに露わになりました。

102

 教室に戻った私は、スケッチブックと学生鞄を持ち、生徒会室に向かった。


「南、待ってたよ。デッサン出来た?」


「はい、何枚か描いてきました」


 生徒会の執行部が私を優しく迎えてくれた。私の描いたデッサンを見ながら、みんなで意見を交わす。


 数点のデッサンから、ポスター用と体育祭のパンフレットの表紙用に、二枚のデッサンを選んだ。


「パンフレットの表紙の原画はこのデッサンで、南さんに頼めるかな?」


「はい」


「ポスターは経費削減で手書きにしたい。それと巨大パネルを作りたいんだ。下絵は南さんにしてもらって、色はみんなで塗って、パーツを組み合わせパネルに仕上げる。それで、どう?」


「生徒会長の案に賛成。南、時間は大丈夫?」


「一橋先輩。任せて下さい」


「よし、任せた」


 笑顔が溢れる生徒会室。

 みんな楽しみながら、体育祭の準備をしている。


 中学校とは異なり、高校は楽しい。

 生徒が自主的に行動する自由な校風。生徒一人一人の瞳がイキイキしている。


 みんなで力を合わせ、ひとつの作品を作り上げるなんてサイコーだ。


 午後六時過ぎ。

 下絵を何とか書き上げ、明日から色を塗ることになった。


「遅くなったけど、みんな気をつけて帰れよ」


「はい」


 私は一橋先輩と一緒に生徒会室を出た。


「南が手伝ってくれて、本当に助かるよ」


「どういたしまして。あっ、一橋先輩。恋のキューピッド作戦、成功したみたいです」


「恋のキューピッド作戦? 山梨のことか?」


「はい。春ですね。恋の季節です」


 一橋先輩がクスリと笑う。


「恋の季節か。南は癒し系だよね」


「えっ?」


「南といるとホッとするんだ」


「ありがとうございます」


 癒し系でホッとするなんて、すごく嬉しい。創ちゃんは私のことを小悪魔だと思ってるけどね。


 一橋先輩がスッと私の手を握った。自然な感じで、私と手を繋いでいる。


 一瞬、何が起きたのかわからなかったけど、創ちゃんとは違う手のひらの感触に、慌てて手を振りほどいた。


「う、わ、わ、わ。一橋先輩ごめんなさい」


「あっ、ごめん。南が可愛かったから……つい」

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