101

「年下のくせに、お蝶って呼ぶな」


「お蝶はお蝶だよ」


 山梨先輩の眼差しは、優しい目をしている。好きな女子を見つめる目だ。


「お蝶は幼なじみだし。マネージャーだし」


「たった今、マネージャーは辞めました!」


「サッカー好きなのに、俺のせいで辞めるのか?」


「自分のために辞めたの! 私は一人の女子生徒。もうサッカー部のマネージャーなんかじゃない」


「わかってるよ。男子には見えねぇし」


「ば、ばか。ふざけないで」


「ふざけてないよ。お蝶はずっと女の子だった」


 泣きながら怒ってる鈴木先輩の頭を、山梨先輩がポンポンって優しく叩いた。


 なんか……

 微笑ましい。


 心がぽかぽか温まる。


 私みたいな落ちこぼれでも、恋のキューピッドになれたかな?


 二人の邪魔をしないように、そっとその場を離れた私。


 お邪魔虫は退散だ。


 夕焼け空を見上げると、優しい風が吹いた。

 山梨先輩も鈴木先輩も、夕陽に照らされてオレンジ色に染まっている。

 

 恋っていいな。


 創ちゃんに早く会いたいな。


 自然と頬が緩み幸せな気持ちになった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る