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「先生、鈴木蝶子は一身上の都合でマネージャーを辞めます」
「鈴木、お前……落ち着け。お前が辞めたらどうするんだよ。サッカー部の士気が下がるだろ」
「先生、私は落ち着いてます。私の後任は山本さんが引き継ぎます。南さんは都合によりマネージャーは辞めるそうです」
「わ、わ、私が鈴木先輩の後任……!?」
百合野は鳩が豆鉄砲くらったみたいに、ポカーンと口を開けている。
「待てよ、今、鈴木が辞めたら困るよ。一緒に夏休みまで頑張ろうよ」
立見キャプテンが鈴木先輩を必死で引き止める。
「立見君、サッカー部は部内恋愛禁止なの。私は山梨颯が好きだと今みんなの前で告白したわ。もうマネージャーを続けられない。私はサッカー部のマネージャーを辞めて普通の女の子になります。我が儘言ってすみません」
キッパリと言い放った鈴木先輩は、男子よりも潔くて、かっこよかった。
「山本さん」
「は、はいっ!」
「これ、試合の攻略法を纏めたノート。学校別に各選手の弱点が纏めてあるわ。我がサッカー部員の弱点もね。勿論優れた部分も分析してある。これからある試合に活用してね。私は引退が数ヶ月早まっただけ、みんな今まで本当にありがとうございました。失礼します」
「わ、私も短い間でしたが、皆さんありがとうございました。失礼します」
私はペコリと頭を下げ、鈴木先輩のあとを追いかけた。
背後から靴音がした。
私達を追う男子の靴音だ。
「待てよ!」
鈴木先輩は知らん顔で歩き続ける。
私は思わず立ち止まった。
私達を追って来たのは山梨先輩だ。
「待てって言ってんだろ!」
どうやら山梨先輩は、私に用があるわけではなさそうだ。
山梨先輩は私を素通りして、鈴木先輩の腕を掴んだ。
「痛いな。乱暴しないで」
振り向いた鈴木先輩は、ちょっと涙ぐんでいる。
「何で辞めるんだよ」
「だって部内恋愛禁止だから」
「まだ誰とも付き合ってねえだろ」
「付き合ってませんよ! ずっと付き合ったりしません。だって私の片想いだから。私だって恋くらいするの。悪い?」
「お蝶は相変わらず生意気で、独り善がりだよな」
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