99
――翌日、放課後。
生徒会室に行く準備をしていたら、一年A組の教室に鈴木先輩が訪ねて来た。
「す、鈴木先輩!?」
「山本さん、南さん、ちょっとグラウンドに来てくれない?」
「えっ……? あっ、はい」
私と百合野は顔を見合せた。
百合野は眉をしかめ「……やだな」と小さな声で呟く。
「制服のままでいいから。ちょっと来て欲しいの」
……なんだろう。
昨日のことで、怒られるのかな?
もしかして、公開処刑的な……。
内心ビクビクしながら、鈴木先輩の後ろを着いて行く。
「南さん、次の部活はもう決めたの?」
「……私、昨日からボランティアで生徒会の仕事を手伝ってて……」
「生徒会の仕事?」
「体育祭のポスター作りです。中学校の時に美術部だったので」
「そう、山本さんは?」
「私は別に……。他の運動部のマネージャー募集を探してるけど、今募集してなくて……」
「そう、残念だったわね」
鈴木先輩は私達の前を歩き、振り向きもしない。百合野は鈴木先輩の後ろで「イーッ」と歯を剥いている。その変顔、まるでお猿さんみたい。
私は神妙な面持ちで、鈴木先輩の後ろを歩いた。
グラウンドに行くと、部員はストレッチをしていた。顧問の先生は腕組みをしながら、部員に激を飛ばす。
もうすぐ大会だから。
みんな必死だよね。
山梨先輩は私を見つけると直ぐさま目を逸らし、やる気なさそうにダラダラとストレッチをしていた。
その様子を見ていた鈴木先輩は、顧問の先生より先に怒鳴り声を上げた。
「山梨颯! 何をダラダラしてんの! 本気出しなさいよ!」
「はっ?」
鈴木先輩に叱咤され、他の部員は目を丸くして動きを止めた。
「女子に振られたくらいで、一体なんなのよ! あんたにとって、サッカーってそんなショボいもんだったの!」
「ショボい? 鈴木、お前何言ってんだよ」
「私はサッカーしてる颯が大好きだった。だから、サッカー部のマネージャーになった。それなのに失恋したくらいで、女みたいにメソメソしちゃってさ。そんな颯みたくないよ! ガッカリさせないでよ! プロになりたいって夢、そんなことで潰さないでよ!」
「鈴木先輩……」
鈴木先輩はみんなの前で、堂々と自分の気持ちを告白した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます