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「礼奈、封筒を開けてみろよ」
「うん」
礼奈が封筒を開けると、ブルーの便箋に丁寧に書かれた綺麗な文字が見えた。男にしてはなかなかの達筆だ。
【君のことが大好きです。他の人を好きにならないで。】
「わぁお」
礼奈は手紙を読み、思わず声を上げた。
封筒にも便箋にも差出人の住所も名前もない。
「俺の妹にラブレターを出すなんて、どこのどいつだ。見つけ出してボコボコにしてやる。まさか、創じゃねぇだろうな」
敏樹は鼻の穴を広げ息巻いている。
何で俺がわざわざ礼奈にラブレターを出すんだよ。好きな気持ちは、直接伝える。
でも、『他の人を好きにならないで。』なんて、まるでストーカーみたいだな。
「一体誰なんだよ? まさか、敏樹?」
「あほか、どうして俺が妹に切手まで貼ってラブレター出すんだよ」
「お前なら、やりかねないからな。俺と礼奈の仲を引き裂く作戦だろう」
「バカバカしい。創、お前も大変だな」
「ふん、人の心配より美貴ちゃんの心配をしろ。美貴ちゃんは超美人だし、いつ振られるかわかんねーよ」
「アホ、アホ、アホ、美貴は俺にゾッコンなんだよ。俺が振られることは、ゼロパーセントだ」
どこからこの自信が湧いて出るのか、不思議でしょうがない。
俺はラブレターを奪い取り、礼奈に確認する。
「礼奈、心あたりは? この字に見覚えない? こんな達筆、一度見たら忘れないよ」
「見覚えはないよ。名前を書き忘れたのかな? 慌てんぼうのサンタさんみたい」
サンタじゃなくて、こいつはサタンだろう。
「狼の群れの、誰かさんだったりしてな」
「誰かさんって?」
「サッカー部の山梨かもな」
「まさか!?」
自称恋のキューピッドが、狼に狙われているなんて、下手くそな恋の矢を放ってる場合じゃないよ。
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