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「マネージャーと部員の恋愛禁止だなんて、アイドル並みですね」


「部内での恋愛は、チームワークを乱す原因になるからよ。歴代のマネージャーはみんなそれを守ってきたわ。あなた達も、いいわね」


「はい」


 私には恋愛禁止ルールは無関係だけど、それを目的で入部した百合野は、あからさまにガッカリしている。


 サッカー部にこんな決まり事があったとは知らなかった。だから、鈴木先輩は自分の気持ちを隠しているんだね。


 部内恋愛をすると退部。

 恋する乙女には、厳しいルールだ。


 ◇


 マネージャーの仕事は想像していた以上に多い。コート整備や掃除、タイムキーパー、スコア、ボール拾い。ドリンクを作ったりタオルを配ったり、仕事は山ほどある。


 男子部員は部室に汗ふきタオルを放置するのは日常茶飯事。鈴木先輩は部室に入り使用済みのタオルを回収して手洗いをする。


「こうしてると、部員と同じ汗を掻いた気になるでしょう。同じチームなんだって思えるの」


 えー……。

 そんなこと思えるなんて、やっぱり鈴木先輩は凄い。私なら『家で洗濯してね』とお願いする。


 部員のお揃いの青いタオルにはネームが入っている。鈴木先輩が自ら入れたものらしい。


 鈴木先輩は『山梨』ってネームの入ったタオルを一生懸命洗ってる。水はまだ冷たくて、手洗いは辛いけど、鈴木先輩はそんな様子は微塵も感じさせない。


 部活が終わり、私達は後片付けに追われる。


「南、お疲れ様」


「山梨先輩……」


「帰りにさ、ハンバーガーかたこ焼き食べに行かない?」


「えっ?」


 驚いたのは私だけではない。傍にいた鈴木先輩と百合野も目を見開いた。


「あっ、山本と鈴木もどう? サッカー部の仲間も数人行くんだ。練習でみんな腹ペコだから」


「颯、私達はオマケみたいね。わかってるの? 部内……」


「部内恋愛禁止だろ? 一体誰が決めたんだろうな。バスケ部はマネージャーとキャプテンが交際していることをみんな公認していて微笑ましいのに。サッカー部は時代遅れだよ。部内で恋愛したからといって、チームワークが乱れたりはしないよ」


「颯、他の部と比較しないで。バスケ部はバスケ部、サッカー部はサッカー部。サッカー部には伝統があるのよ」


「はいはい、誰かが決めたルールなら、誰かが変えればいいんじゃない? 次のミーティングの議題に出そうかな」


「バカなこと言わないで」


 鈴木先輩はホウキで山梨先輩のお尻を叩いた。ルールを変えたいのは、きっと鈴木先輩も同じ気持ちなのに。


「南も山本も校門で待って。お蝶はどうする?」


「お蝶って呼ばないで。仕方ないから行くわ。サッカー部員が可愛い新人マネージャーを襲うと、学校で問題になるからね」


「俺達を野獣みたいに言うな」


 山梨先輩は笑いながら、サッカー部の部室に向かった。

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