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桐生君は私に背を向け、駅の方角に向かった。私は桐生君を見送る。
桐生君が立ち去り、私は家の中に入った。結局、桐生君の用事は何だったのかわからなかった。
ドタドタと大きな音を立てながら階段を駆け降り、見事に階段を踏み外した創ちゃんが、ドドドッと目の前に落ちて来た。
「いてて……てて」
「やだ創ちゃん、何やってるの? 足は大丈夫?」
「礼奈、桐生が何でここに来たんだよ! どうして礼奈の家を知ってんだよ! 何の話をしてたんだよ!」
創ちゃんは壊れたスピーカーみたいに、ガーガー怒鳴る。ちょっと煩い。
「桐生君は近所に住むクラスメイトと卒業パーティーをしたんだって。何の用事だったのかな? 私にもわかんない」
「わかんない!?」
創ちゃんは「イテテ」と、腰を擦りながら立ち上がった。
「桐生君が『お兄さんが二人いるんだね』って言うから、創ちゃんは『お兄ちゃんじゃないよ。私と交際してるの』って言っただけだよ」
「えっ? 俺達のことを話したのか? な、なんだ、それで桐生はなんだって? トドメを差したんだ。諦めただろ」
「『俺の気持ちは変わらないよ』……って」
「うわっ、サイテーだな。礼奈に俺という超イケメンで大人な彼氏がいるのに。それでも諦めないとは。しぶとい奴だ」
超イケメンはあってるけど、大人かどうかは疑問。だって、そんないい方は桐生君に失礼だよ。
年齢は確かに大人だけど、精神年齢はお兄ちゃんと同じだ。冷静な態度だった桐生君の方が、創ちゃんよりも大人みたい。
桐生君は、本当に私のことを……?
だから、わざわざ家に訪ねて来たの?
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