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 ―原宿―


 電車で移動した俺達は、礼奈が行きたがっていたショップに入る。客層は圧倒的に十代の女子だ。


 店内にはネックレスやピアス、リングやコサージュ等のアクセサリーや、女子が好みそうな雑貨が並んでいる。


「わぁ可愛い! 創ちゃん、このリング可愛い」


 礼奈が見つめる先にはシルバーのリング。リングには小さなハートが二つ並んでいる。


 礼奈はそれを手に取り、俺を見上げリングを差し出した。


「創ちゃん、左手の薬指につけて」


 左手の薬指?


「それは、ダメ」


「どうして? つまんないよ。礼奈はこれが欲しい」


「だったら、高校に合格したらプレゼントするよ。ただし、つけるのは右手の薬指だよ」


 左手の薬指は、神父様の前で俺達が永遠の愛を誓う日まで封印だ。


「右手の薬指? うん、それでもいい。約束ね」


「約束な」


 店内で指切りを交わす、無邪気な姫。

 そんなところも、めちゃめちゃ可愛い。


「あれ? 南じゃん」


 店内から馴れ馴れしい男の声がした。高身長でツンツンの髪をしたイケメン男子が、店の奥からひょっこり顔を覗かせた。


「それ買うのか? サイズ合うかな?」


 こともあろうに、そいつは礼奈の手を掴むと左手の薬指にあっさりリングを嵌めた。


 オーマイガー!!


「うおー!? はっ? えっ? お前、何してんの?」


「あっ、こんにちは。南のお兄さんですか? 南によく似てイケメンですね。南、リングのサイズぴったりじゃん。それ欲しいなら俺がプレゼントするよ」


 な、なんだって!?


桐生きりゅう君が私に? でも……」


「ここ俺の父が経営してるんだ。だからいいよ。南にあげる」

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