25

 【創side】


 翌日、登校日だった俺は、瞼を腫らし顔に青痣をつくったまま高校に行く。


 俺の悲惨な顔を見て、クラスの友達は大騒ぎしている。


「どーしたんだよ創! 誰にやられた! 何処の高校だ!」


「許せねぇな、みんなで仕返しに行こうぜ!」


「おう! 取っ捕まえて全員ボコボコにしてやる!」


 クラスメイトが俺の無惨な顔を見て、勝手に盛り上がっている。今にも集団で学校を飛び出しそうな勢いだ。


「みんな落ちつけよ。俺をこんな顔にした奴はコイツだ」


 俺は隣に座っている敏樹の顔を、思いっきり指差した。


 みんなは俺の味方だ。

 みんなが敏樹に俺の仕返しをしてくれる。


 俺は礼奈と付き合ってる手前、敏樹に手を出せないが、みんなが敏樹をボコボコにしてくれるはずだ。


「ええー……まじで!? 鬼瓦の仕業かよっ!」


 クラスメイトが一斉に声を張り上げ、敏樹に視線が集中した。


「ひでぇなぁ敏樹。イケメンの創をボコボコにしたのか? ここまでやる必要あんのか? 創、お前何をやったんだよ? まさか、敏樹の彼女に手を出したのか? そうなんだろう。それならこの仕打ちも十分あり得るな。自業自得だ」


「あほ、敏樹の彼女に手は出さないよ。俺は、俺の彼女をハグしただけだ」


「はぁ? 意味わかんねぇ? なんで自分の彼女にハグして、敏樹が創を殴るんだよ? まさか敏樹が創の女に惚れたのか!? うわ、親友同士で三角関係? いや、四角関係? ひし形? 楕円形?」


 類は友を呼ぶというが、アホばっかりだ。


「ちがうよ。俺の彼女は敏樹の妹なんだよ」


「ひゃあー! 最悪じゃん! 敏樹の妹って、敏樹にそっくりなんだろ? 敏樹に付き合えって脅されたのか?」


「アハハハッ! 敏樹の女装バージョンかよ。この世のものとは思えねーよ。創、お前よく付き合えるな」


 どいつもこいつも、好き勝手なことをほざきやがって。礼奈のどこが、敏樹そっくりなんだよ。似ているのは足の裏くらいだ。


「敏樹に似てねぇーよ!」


「俺に似てねぇーよ!!」


 俺達の声が仲良くハモッた。

 

 俺と敏樹は顔を見合わせる。

 喧嘩をしていた俺達だが、敏樹の女装を想像し、思わず吹き出す。


「ぷっ……」


「創、笑うな!」


「礼奈がお前に似ていたら、俺は付き合ってないし。お前と同じ顔だなんて、想像しただけでおぞましい」


「創、それは言い過ぎだぞ。……つうか、昨日は俺が悪かったよ。ちょっとやり過ぎた」


「はっ? お前が俺に謝るのか? 天と地が引っくり返るぞ。地球滅亡だ」


 敏樹が人に謝るところなんて、今まで一度も見たことがない。


「実はさ、昨日礼奈に大泣きされて、『もうお兄ちゃんなんか大嫌い』って言われたんだよ。俺、まじでショック。絶交だって顔も合わせないし、口も聞いてくれないんだぜ」


「……へっ? 礼奈が……大泣き?」

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