23

 まどかと交際している間、幸せを感じるよりも不安なことの方が大きかった。


 まどかのことを独占したくてキス以上のことを求めてしまい、まどかに拒まれ俺もまどかもギクシャクした。


 俺が熱くなればなるほど、まどかの心は冷めていき俺から離れていった。


 あの頃の俺はまどかが離れていく焦りと、自分自身への苛立ちでいつもピリピリしていた。


 でも今の俺は違うんだよ。


 礼奈とは、心で繋がっていられると信じてるから。


 だから前みたいに焦りや苛立ちなんて感じない。礼奈といると心が洗われ穏やかになれる。


「創、変わったね」


「そうかな? 礼奈が俺を変えてくれたんだよ」


「……そう。いい子に巡り会えたんだね。私ね、実は今からデートなの。今付き合ってる彼氏は時間に煩くて、五分でも遅刻したら大変なのよ」


 まどかが「ふふっ」て、意味深に口元を緩めた。


「そんな男と付き合ってるのか? 大変だな」


「だよね。でもあの頃の創とちょっと似てるんだ。ヤキモチ妬きで、どうしようもないんだから。自転車の二人乗りなんて目撃されたら、拗ねちゃうかも」


「……なんだよ、それ」


「ふふっ、何度恋をしても創みたいな人を好きになっちゃうみたい。仕方ないね。創、可愛い彼女とお幸せにね」


「ありがとう。まどかも元気でな」


 まどかはニコッと笑い俺に手を振ると、小走りに駅の中に入って行った。


 俺は自転車に跨がったまま、暫くまどかの後ろ姿を見つめていた。


 まどかに本当のことを話して、吹っ切れた気がした。


 心のどこかに燻っていたモヤモヤしたものが、浄化された気がした。


 ――礼奈……。


 やっぱり俺は、礼奈のことが好きだよ。


 だけど……。

 俺の気持ちは、礼奈にちゃんと伝わってるのかな?


 心で繋がるって……難しいよ。

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