22

 礼奈は妹みたいに可愛くて。

 言動も仕草も、全部全部可愛くて。


 その時の俺は、まだ礼奈のことを異性として好きって気持ちは芽生えていなかったけど、礼奈と一緒にいると、まどかのことを忘れられた。

 

 付き合い始めた動機は不純だったけど、礼奈が俺の寂しい心に恋の種を撒いてくれた。その種はやがて芽を出し、恋の花を咲かせた。


 今の俺は礼奈のことが大好きで、礼奈に夢中なんだ。


 礼奈が咲かせてくれた花を枯らせたくはない。礼奈を傷付けたりはしないって、そう誓ったのに……。


「創、私ね。あの人とは別れたの」


「えっ? 別れた……?」


「彼は大人だったから、高校生の私では物足りなかったのね。私、失恋したの。創は今一人なの?」


「……いや。俺、今付き合ってる子がいるんだ」


「そう」


「さっきの女の子は、俺の彼女なんだ」


 ……やっと、言えた。


 でも、今頃言っても遅いよな。

 礼奈はここにはいないんだから。


 まどかは目を丸くして驚いている。


「……うそ。あの子と付き合ってるの? どうみても、中学生にしか見えなかったけど?」


「そうだよ。中学生だよ。彼女は中学二年なんだ。敏樹の妹なんだよ」


「……やだ、中学生と付き合ってるの?」


「彼女は俺の大切な人なんだ。傍にいて守ってやりたいと思ってる」


「……そっか。創、優しい顔になったね。以前はもっとキツい顔してたから。私と付き合っていた頃の創は、いつもイライラしていて怖かった」


「そうだったかな」


 当時の俺は、今ほど心にゆとりがなかった。まどかが他の男に奪われはしないかと、いつも周囲に睨みをきかせ、精神的にもピリピリしていた。

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