21

 【創side】


 まどかを自転車の後ろに乗せて、駅まで飛ばす。


 まどかを後ろに乗せているのに、頭の中は礼奈のことで埋め尽くされている。


 どうしてまどかに礼奈のことを『彼女だよ』って、はっきり言えなかったんだろう。


 俺は礼奈を……傷付けてしまった。


 あいつ……泣いてないよな。


 ――駅に着き、まどかが自転車から降りる。


 まどかの長い髪の毛が風に揺れ、甘ったるい香水の匂いがした。


 デートのたびに、まどかが愛用していた懐かしい香水の匂いだった。


「ありがとう。創が元気そうで安心したわ。あれからどうしてるのかなって……思っていたから」


「俺は元気だよ。まどかも元気そうで安心したよ。まどかはまだアイツと続いてるのか?」


 俺がまどかと別れた原因は、まどかに新しい彼氏が出来たから。高校一年の冬、まどかに俺以外の彼氏が出来た。俺はまどかに二股されていたんだ。


 しかも相手は二十四歳の社会人だった。一流企業に勤め高級車を乗り回し、親の財力もあり、高校生の俺には到底敵わない大人の魅力を全部兼ね備えていた。


 俺はまどかのことが本気で好きだったから、『好きな人ができた』って告白された時は、凄くショックで落ち込んで……。


 まどかの気持ちを取り戻したかったけど、大人の男に高校生が勝てるわけもなく……。


 結局俺は、無様な姿をまどかに印象づけたまま、フラれたんだ。


 ――そして、その年の夏。

 俺は中学生の礼奈に告白された。


 礼奈なら俺を裏切らない。

 純粋に俺だけを好きでいてくれるに違いないと、勝手にそう思った。


 もう傷付きたくない。


 恋に臆病になってしまった俺は、ピュアな礼奈の想いにほだされた。

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