20
【礼奈side】
創ちゃんを見送るために家の外に出たら、綺麗な女の人が声をかけてきた。
少し栗色の長い髪は毛先が緩やかなウェーブをえがき、整った顔立ちの美人。彼女が近付いただけで、ふわっと甘い香水の匂いがした。
彼女は誰なの?
創ちゃんのことを、『創』って親しげに呼び捨てにした。
私のことを『妹さん?』って聞いてきた。
創ちゃんは、彼女にどう答えるの?
私のこと、ちゃんと彼女だって紹介してくれるよね?
それなのに創ちゃんは、私を『友達の妹』だって、言ったんだよ。確かにその通りだけど、私は創ちゃんの彼女じゃないの?
それともお兄ちゃんに殴られて、私のことなんて嫌いになったのかな?
どうしよう……。
私、創ちゃんに嫌われたんだ。
女の人は甘えるように、自転車の後ろに乗った。長い髪がふわっと揺れた。
自転車の後ろにちょこんと横座りして、創ちゃんに背後からギュッて抱き着き、広い背中にコテッと頭を密着させた。
……ありえない。
自転車の二人乗りを、私ではなく他の女子がしているなんて。
ダメだ……。
もう……泣きそうだよ。
二人のイチャイチャする姿を見ていられなくて、私は無言で家の中に入った。
「リンリン」と、自転車のベルの音がドア越しに聞こえた。
まるで『さようなら』って、別れを告げているみたいに。
玄関ドアに背を凭れていると、ドッと涙が溢れてきた。
私は、ただの『友達の妹』なんだ……。
ダムが決壊したみたいに、ダダーッて涙が溢れた。
大人の女性……。
創ちゃんとお似合いだよ。
きっと……
あの人と付き合ってるんだね。
創ちゃんの本命は彼女で、私は『友達の妹』に過ぎない。
だから、中学生の私とは本気になれないんだ。
胸がキューッと締め付けられ、鼻腔の奥がツンとした。次々と溢れ出る涙。
創ちゃん……。
涙が止まらないよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます