創ちゃんには美人のカノジョがいます。

18

 【創side】


 結局、その日俺は礼奈とのデートを中断して、帰ることにした。


 顔がバンバンに腫れて、男として情けないやら格好悪いやらで、礼奈の部屋で寛ぐ気分にはなれなかったから。


「創ちゃん、本当にごめんね」


 礼奈は申し訳なさそうに、俺に視線を向けた。


「いいよ、礼奈が気にすることじゃない。敏樹の性格はよくわかってるからさ」


 俺は礼奈の頭をクシャッと撫でる。

 礼奈は顔をクシャッと歪め、今にも泣きそうだ。


 自転車に跨がり、腫れた頬を触る。


 敏樹のやつめ。親友なんだから、少しは手加減しろよな。


 自転車のハンドルを握り、ペダルに足をかけた。


「あれ? 創じゃない?」


 俺の背後で懐かしい声がした。

 振り返ると俺の元カノだった。


 どうしてここにいるんだよ?


 去年の三月まで、付き合っていた吉川よしかわまどか。俺より一歳年上だ。


「創、元気? 久しぶりね。えっ? 創の家って、このへんだっけ?」


 まどかは自転車の隣に立っていた礼奈に視線を向けた。


「こんにちは。可愛いね。創の妹さん? っていうか、創に妹いたっけ?」


「いや、その……友達の妹なんだ」


 俺は咄嗟に礼奈のことを、友達の妹だと紹介した。


 まどかの前で『俺の彼女なんだ』って、何故か言えなかった。


 当然、隣に立っていた礼奈の顔付きが変わった。


 礼奈、気を悪くしたかな?

 怒ってますよね?


「ねぇ創、お願いがあるの。私ね、今から新宿に行くの。よかったら最寄り駅まで送ってくれない?」


 まどかが縋るような眼差しを俺に向けた。


 駅まで送るって、俺は自転車だよ。

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