【創side】


 俺は歩道橋で礼奈の真後ろを歩く。短いスカートが風に揺れる花びらのようにヒラヒラして、下着が見えそうだったから。


「ねぇ? 創ちゃん何で後ろを歩くの?」


「礼奈のスカートが短かいから、うしろの奴に見られたら困るし、盗撮なんてされたら許せないからな」


「盗撮? 本当は創ちゃんが、見てたりして?」


「……っ、バカッ! 誰が見るかっ!」


 本当は礼奈が階段を上るたびに、チラチラと下着が見えそうで見えない。


 マジで、この状況は心臓に悪い。

 ドキドキと鼓動は速まり、こんな状況が続くなら俺はきっと早死にしてしまうだろう。


 他の男に礼奈の生足だって見せたくないのに、下着を見られたら逆上してその男を抹殺しそうだ。


 だけど何で礼奈は、こんな恰好してるんだよ?


 キャミも胸元開きすぎだし。

 豊かな胸の谷間が、屈むたびにチラチラ見えてるだろ。


 隠せ、隠せ。

 全身タイツで頭から爪先まで隠しちまえ。


 俺は礼奈の生足を誰にも見せたくないんだよ。大体カレシの俺がまともに見れないんだから、赤の他人に見せてたまるか。


 礼奈はわかってるのかな?

 こんな格好をしたら、男に狙われるってこと。


 礼奈は無邪気な中学生だ。

 そんなこと、きっと考えたこともないに違いない。


 ◇


 映画館に着き、チケットを購入する。礼奈の好きなオレンジジュースと俺のコーラ、ポップコーンも購入して開場時間を待った。


 今日観る映画は、礼奈のリクエストで恋愛ものだ。いつもならアニメにするのに、今日はどうしたのかな。


 R指定ではないけど、もちろんラブシーンだってある。何でこんな映画を選ぶんだよ。悶々している俺に、さらに悶々とするような映画を観せるなんて罪だよ罪。


 開場時間になりシアターの中に入ると、一番後ろの席で、チュッてカップルがキスをしていた。


 ――マ、マ、マジですか……。


 映画館って、自由にキスしていいんだっけ? いつからそんなシステムに変わったんだ?


 システムが変更したなら、俺だってめっちゃキスしたい。


 でもそれはできない。


 ――我慢、我慢、我慢、我慢。


 眠れない夜に羊を数えるみたいに、俺は『我慢』と、呪文のように数える。

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