【1】小悪魔なお姫様

礼奈が大人になるまで手は出しません。

 【創side】


 俺の部屋で、初デート。

 しかも、家族は不在だ。


 男にとって、こんなチャンスを生かさないわけがない。


 でもこれは、一般論だ。

 俺にとって、彼女と二人きりになるということは……。


 素直に「ラッキー」って、喜んでいられない事情がある。


 それは……。

 俺がと闘わなければいけないからだ。


「ねぇ、そうちゃん」


 礼奈れいなが俺の後ろから抱きついた。背中に礼奈の温もりと、ふっくらとしたマシュマロのようなバストの膨らみを感じた。


「うわわ……よせ、礼奈、離れろっつーの!」


「どうして?」


 大きな目をクリクリさせて、礼奈は背後から俺を見上げる。色っぽい眼差しに長い睫毛がふわふわと揺れた。


「……ななななんでって、抱きつかれたら困るんだよ」


「だからぁ~どうして困るの?」


「……っ、それはその……どうしても困るんだよっ!」


 俺は十八歳の健全な男子なんだよ!

 好きな女子に抱きつかれたら、心は理性を保てても体は反応してしまう。


 だけど礼奈はそんなことをわかってるんだか、どーなんだか。


 やたらと俺にベタベタと抱きつく。

 まるで瞬間強力接着剤みたいに、一度くっついたら離れない。


「あのね、創ちゃん我慢すると体に悪いんだよ」


「はぁっ!?」


 俺は思わず声を張り上げた。我慢すると体に悪いって、こいつ……意味がわかって言ってるのか?


「ねぇ、創ちゃんと礼奈は付き合ってて、創ちゃんは礼奈のカレシなんだよね?」


「……そうだけど」


 俺に抱き着いたまま礼奈が問いかける。


 わかりきった質問を、幼稚園児みたいに何度も問いかけ、唇を尖らせ俺の耳に『ふぅ〜』と熱い息を吹きかけた。


「ひ、ひえぇぇぇ……」


 お前は小悪魔か。

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