【13-35】カイサにて 上
【第13章 登場人物】
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816700429616993855
【地図】ヴァナヘイム国 (13章修正)
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330651819936625
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ヴァナヘイム軍によるドリス城塞での「
また、同城塞には、後続の帝国各隊も続々と到着する予定であった。
事は急を要する。
だが、無電や伝令を飛ばしても、現地の指揮官・コナン=モアナ准将に黙殺されるだけだろう。
【13-34】老人と気象 下
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16817330652266044240
火計を未然に防ぐため、第7旅団を動かすべく、エドラ城塞は帝国軍総司令部より、しかるべき立場の人間を、迅速に派遣せねばならない。
「よし、俺が行こう」
先任参謀・セラ=レイス中佐は、自らがドリスに乗り込み、禿頭大佐(准将)と掛け合うという。
現在の東征軍では、参謀部のトップたる参謀長は、ズフタフ=アトロン老将が兼任している。まさか、総司令官自身を送り込むわけにもいくまい。
相手の策を読んだいま、また火計封じの作戦が発動していないいま、一番暇なのは、この先任参謀かもしれない――参謀部において異論は出なかった。
ただでさえ手狭なエドラの参謀部室は、資料に埋まりはじめている。そこで居眠りでもされたら、邪魔なだけである。
同じく担務に余裕があるニアム=レクレナ少尉も帯同することになった。それについても異論は出なかった。
彼女は各班にちょっかいを出しては、作業を妨げてばかりいる。その憎めないキャラクターゆえか、緊迫した場が和むだけに、始末にわるい。
副長のキイルタ=トラフ中尉も当然のことのように帯同するという。それについては、全員一致で異論が出なかった。先任参謀殿……愛されておりますな、と。
デスクに山成す書類を瞬時に片付けた――腰の拳銃光る副長を前に、異論を差し挟むような命知らずは参謀部にいない。
エドラ城塞を出立したレイス一行は、カイサの町に入った。
エドラ・ドリス両城塞から、ほぼ等間隔にあるこの宿場町で、足を休める者は多い。
トラフは街先で敵味方の状況について、聞き込みをすることにした。宿に到着した途端、くつろぐことを決め込んだ紅髪の上官と、どこか食べ歩きにでも出かけた蜂蜜頭の後輩を諦めて。
もっとも、レイス・レクレナ両名にも言い分はある。
道中は先導するトラフの性格そのものであった。騎馬
おかげでカイサまで80キロを1日で走破したわけだが、半日以上行程を縮めた強行軍による犠牲は少なくなかった。
レイスは宿に入るなり、ベッドに倒れ込んで動けなくなった。
レクレナは空腹に耐えきれず、街道沿いの
馬たちの非難の
トラフは疲れの色も見せず、帝国語・ヴァナヘイム語を駆使し、カイサは中央広場での聞き込みに精を出していた。
帝・ヴァ戦争のさなか、帝国軍先遣隊の一部は滞在するものの、商隊は活発に行き交っている。彼女はここで敵味方――特にヴァナヘイム軍の動きにつながる情報を集めたのだった。
ポニーを駆る少女以下、騎乗の衛兵数名が、広場を通りかかったのは、そんな矢先のことである。
「ソルちゃん?」
「あ、副長さん!」
【作者からのお願い】
この先も「航跡」は続いていきます。
トラフのストイックさには、レイスもレクレナでもついて行けないのだな、と思われた方、🔖や⭐️評価をお願いいたします
👉👉👉https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758
レイスたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢
【予 告】
次回、「カイサにて 中」お楽しみに。
「中佐もここまで来ているわ」
「えッ」
旅塵にまみれ、疲労の色が漂っていたソルの表情は、突然生気を取り戻した。
――本当に可愛らしい。
ほのかに頬を染めている様子は、まるでお人形のようである。
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