【12-11】ケニング峠の戦い 3

【第12章 登場人物】

https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816700429613956558

【地図】ヴァナヘイム国

https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16816927859849819644

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 帝国暦383年9月14日午前6時、総司令部からの命令を受けて、リア=ルーカー中将は、たちまち陣立てに着手する。


 片眼鏡の将軍の命令は麾下の各隊に行き届き、グラシル城塞を出たばかりの帝国軍中央・第1師団では、階段状の陣容が構築されていく。


 通信室のテーブルに、即席の絵図と敵味方を示す赤・青の凸型駒が、副官・キイルタ=トラフによって手早く用意された。


 現地からの無電報告をもとに、絵図の上に両軍の駒が配置されていく。



 ルーカーの意図は、ヴァナヘイム軍の頭を押さえていくものだろう。


 いにしえの巻狩りのごとく、射掛けるように――遠巻きに砲弾を送り込み、次第に近づいて長距離射程の銃弾を見舞おうというのである。


 ――悪くねぇな。

 赤駒の配置を眺めながら、セラ=レイスは1人うなずいた。



 同日11時頃、レイスの見立てどおり、戦況は「帝国側のやや優勢」で始まった。


 ヴァナヘイム軍は、突出を試みるも、帝国軍の巧みな布陣により、常に頭上を押さえこまれていく。


 帝国勢の攻勢を嫌気したように、ヴァ軍は力なく後退を始める。



 二十数キロ先――無電機器の前に座り込むレイスは、高揚感にこぶしを握りしめる。


 そのまま、ヴァ軍を背後のケニング峠に追い込み、崖下へ落としてしまえ、と――。



 ところが、14時に至ろうとする頃、ヴァナヘイム軍は意外な手を繰り出してきた。彼等は後退と戦闘を継続しながら、陣立てを改めつつあるという。


 刻一刻と、帝国軍総司令部に、無電を通じて戦況がもたらされる。レイスは、総司令部管轄の斥候兵に加え、アレン=カムハル少尉以下、己のともいえる者たちも、戦場に派遣していた。


 後退と戦闘――刻々と推移する状況に応じるだけでも、普通の指揮官であれば手一杯になる。それなのに、ヴァナヘイム軍の指揮官は陣形組み換えまで、同時にやってのけているという。


 レイスは舌打ちする。さすがは、アルベルト=ミーミルといったところだろうか。


 ヴァ軍の新たな布陣が形成されていくにつれて、敵司令官の意図が次第に判明する。


「これは……」

 現地からの報告に基づき、ヴァ軍の陣容を脳裏に描いていたレイスは、絶句していた――かたわらのトラフが図上の青駒を動かす前に。





【作者からのお願い】

この先も「航跡」は続いていきます。


ミーミル麾下ヴァナヘイム軍相手に、レイス総括・ルーカー指揮なす帝国軍が、良い形で戦闘入りしたな、と思われた方、

レイスが気が付いたことが気になる方、

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レイスたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢



【予 告】

次回、「【イメージ図 ① ②】ケニング峠の戦い」お楽しみに。


街道をふさいだヴァナヘイム軍、絶好の形で戦端を開いた帝国軍――キイルタ=トラフ中尉に、即席の絵図と敵味方を示す赤・青の凸型駒をご用意いただきました。


戦闘の序盤の様子を図上に落とし込み、解説します。

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