【7-8】親書 下

【第7章 登場人物】

https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816700428974366003

【世界地図】航跡の舞台

https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16816927860607993226

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 ヴァナヘイム国の使者が訪れていた頃、ブレギア宰相・キアン=ラヴァーダは王都を離れ、同国西端の城塞都市・アリアクにいた。


 帝国軍のヴァナヘイム領侵攻に伴い、ヴァ国との国境周辺における敵味方豪族たちににらみみを利かせるためと、不測の事態に即応するためである。


 東方・ブレギア首都から続くなだらかな平原は、アリアク城を境に西方へ向けて少しずつ隆起をはじめていく。それらを超えると、そこはヴァナヘイム国である。


 この辺り――ヴァナヘイム・ブレギア国境付近――の豪族たちは、常に優勢な勢力につく。


 それが彼らの生き残る術であり、両者の優劣をぎわける能力は、動物的といってよいほど鋭い。



 ブレギアはこの十数年、ヴァナヘイムや帝国の侵略をことごとく撃退し、その国威盤石ばんじゃくであることを国内外に知らしめてきた。


 しかし、ここに到って、主君が病気がちであるとも聞かれる。


 さらに、隣国のヴァナヘイムは、帝国軍の侵攻になす術もなく、その滅亡は時間の問題になってきている。


 ヴァナヘイムが滅びれば、ブレギアもその先はどうなるか分かったものではない。


 国境の豪族たちのなかには、宗主国たるブレギアに対して、旗幟きしを不鮮明にする者が出はじめていた。


 境域警備任務を放棄する者や、租税を滞納する者などが少しずつ現れていたのである。


 ラヴァーダは、そうした懸念を払しょくし、ブレギアの健在さを誇示するため、歩兵5万、騎兵(騎翔隊)2万といった精鋭を率いて、このアリアク城に入城したのであった。


 7万にもおよぶ将兵の逗留とうりゅうに、城下はたちまち賑わいに包まれていた。




 帝国暦383年5月30日、ダーナにてブレギア国主との会見を終えたヴァナヘイム国の使者は、同国宰相との会談に臨むため、アリアク城塞に向けて出発した。


【7-7】親書 上

https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816700427833987706



 首都から西へ500キロ、自国へ戻るような道のりとなるが、10日間の旅路に就いたのである。


 出国前に散髪し整えたはずの頭髪は既に乱れ、髭の手入れもろくになされていない。


 しかし、その儀礼用の軍服はさすがにまだ新しく、見た者に対し、彼が一国の使者であることをかろうじて認識させることはできている――。


 ヴァナヘイム国の使者は、軍務省ナンバー2・ケント=クヴァシル中将であった。


 国家多難の折、高齢の軍務尚書に代わり、軍政を執り仕切っている次官であり、総司令官職に若きアルベルト=ミーミルを推挙した人物である。


【4-3】任命式 上

https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816700427579833327






【作者からのお願い】

この先も「航跡」は続いていきます。


軍務省次官自らが使者となるとは、ヴァナヘイム国も本気だなと思われた方、

クヴァシルとラヴァーダの会談が楽しみという方、

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クヴァシルたちが乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢




【予 告】

次回、「【地図】ヴァナヘイム・ブレギア国境」を掲出します。

クヴァシルの足跡とともに、草原の国の広大さを実感いただけたら幸いです。

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