【10-11】 庇護欲
【第10章 登場人物】
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816700429411600845
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「アルヴァの妻・フレイヤと申します。軍の皆様におかれましては、夫が大変お世話になっております」
白色軍服姿の5人とも、思考という名の陣形が乱れたままである。陣形再編の目途がつかない彼等を
「今日は、次官様はいらしていないのですか?」
――次官様……軍務省次官のことだろうか。
「も、申し訳ございません。クヴァシルは、本日業務が立て込んでいるため……」
ミーミルの言葉に、奥方の大きな瞳は、落胆の色に支配される。
「次官様は、今日ももじゃもじゃでしょうか……」
――もじゃもじゃ?
確かに、クヴァシル次官の髪は、伸び放題――あちこち雑然と飛び跳ねている。
だが、回答を求めているようではなさそうなので、ミーミルはもうしばらく奥方の様子をうかがうことにする(脳内陣形いまだ整わず、無暗に動けない)。
「うちの夫も理容師に命じて、もじゃもじゃにイメチェンさせようかしら……」
などとの御発言に、そもそも回答などできようはずもない。
副司令官・参謀長は口元を
いずれも、イメチェンした中将を想像でもしているのだろう。
ミーミルだけは沈着冷静さを失わず、オーズ邸訪問の本来の目的――首飾りの返却を忘れていなかった。
だが、「待機・状況確認」の方針を、総司令官はすぐに後悔することになる。
奥方の総攻撃が始まった。
「次官様の上着は、相変わらず
フレイヤの一人語りは、
ミーミルは
それにしても、オーズ夫人について、クヴァシル次官殿が「どちらかといえば苦手」と、そっぽを向いていた理由が分かった気がする。彼の身なりや境遇は、彼女の
アルバムのなかのクヴァシルは、全体的に小さくかつ清潔になっただけで、髪型やひねくれた笑みなど、その
傍らの階段将校たちは、リアクションに窮しているのだろう。教官の幼き頃の写真を、神妙な面持ちで見入っている。
しかし、軍服5人組を最も当惑させたのは、幼少期の
アルバムをめくっていくと、途中からフレイヤの
帝国軍を手玉に取った名将・ミーミルの頭脳をもってしても、そのカラクリは分からなかった。
【作者からのお願い】
この先も「航跡」は続いていきます。
もじゃもじゃヘアになった猛将を見てみたい、と思われた方、
フレイヤのおしゃべりシャワーに参った方、
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【予 告】
次回、「ネイル」お楽しみに。
「まったく、あの人ったら……」
宝物庫を開けたら必ず錠を閉めるよう、妻は口を酸っぱくして言ってきたが、夫はいつも施錠を忘れていたという。
そして今回、首飾りを盗まれた。
フレイヤは、思い出している間に怒りがぶり返したらしい。大きな瞳は黒く濁っていき、栗色の巻き毛は逆立ちはじめている。
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