【10-8】 大陸一の英傑 上
【第10章 登場人物】
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816700429411600845
【世界地図】航跡の舞台
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16816927860607993226
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翌日の午後、ヴァナヘイム軍の現場三役と階段将校2名は、同じ馬車に揺られていた。
軍務省次官の働きかけで、総司令官とその護衛(階段将校)たちは、本日の面会がすべてキャンセルになった。彼等のもとに、同じく次官の差配によって午前の内に職務を終えた副司令官と参謀長が、合流したのであった。
王都に
ノーアトゥーンは、イエロヴェリル平原よりも標高が高く、気温はいくらか控えめである。しかし、狭い車内に5人が一同に集うと、蒸し暑さは否めない。
外気を取り入れようと、副司令官・スカルド=ローズルが窓を開けた。小気味よく響いているのは、
馬車が進む王都城下の街道沿いには、そこかしこに横断幕が掲げられていた。
「救国の英雄『アルベルト=ミーミル』を
「ミーミル閣下、帝国軍を撃破してくれてありがとう」
「まだまだ蹴散らせ!アルベルトの号令の下に」
「イーストコノート大陸から、帝国を駆逐せよ!!」
どれもが、ヴァナヘイム軍総司令官・アルベルト=ミーミル大将を褒め、
それら標語の下では、昼間だというのに、老人たちが男女かかわらず、杯を交わしている。その合間では、若い女性たちがお茶を楽しんでいる。各店の軒先に並ぶテーブルは、どれも活気に満ちていた。
そうした酒場や茶店のただなかで、先を行く荷馬車や乗用馬車に続いて、ミーミルたちの馬車も一時的に停止する。この先で交通整理をしているのだろう。
すると、往来に近いテーブルに座っていた初老の男たちは、眼前のひときわ大きな馬車に「救国の英雄」が坐乗していることに気が付いた。
「あれ、ミーミルじゃないか!?」「ほら、あの馬車のなかだよ」と、はじめは小突き合っていた者たちが、次第にこちらに向けて、指を差しはじめる。
新聞で見慣れた、若き総司令官の顔が、車窓の先にある。
小突き合いと指差しの波は、あっという間に広まった。
程なくして往来の流れが再開し、馬車も動き出す。
「ミ、ミーミル閣下ッ!?」
「本当だ、総司令官閣下だ!」
酔っ払いたちが酒杯を片手に、女性たちがカップを置いて、馬車を追いかけはじめた。
気づきと驚きは、辻から辻へ
「ミーミル大将、ありがとう!!」
「
「帝国人どもにトドメをお願いしますぞぉ!」
いつの間にか、馬車は民衆とその合唱を引きずるような形になっていた。
ミーミルは、後部の小さな車窓に顔を出すと、後続の群衆に向けて手を振る。
人だかりのボルテージはさらに上がるが、階段将校・シームルとセーグは首を傾げ、顔を見合わせていた。当の総司令官の表情には、物憂げな色が漂っていたからだ。
御者は軽く鞭を当て、馬車の速力を上げる。
群衆との距離は、次第に開いていった。
【作者からのお願い】
この先も「航跡」は続いていきます。
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ミーミルたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢
【予 告】
次回、「大陸一の英傑 下」お楽しみに。
オーズ邸への道中、奥方様の想像図が出来上がっていきます。
ヴァナヘイム軍一の猛将に手傷を負わせたうえに首まで――奥方様は、イーストコート大陸一の英傑ということではないのか。
女王・マホリヤ=ムスト、女傑将軍・エドナ=エスカータ……猛々しい者たちを思い浮かべ、5人は思わず首をすくめる。それら伝説級の人物に
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