【10-6】 部隊運動訓練 上
【第10章 登場人物】
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816700429411600845
【地図】ヴァナヘイム国
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16816927859849819644
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バー・スヴァンプでは、階段将校たちが酒の勢いのまま、渓谷内で行われてきた厳しい訓練について語っている。
この3カ月の戦跡をたどるように、クヴァシルは両腕を組み、じっと聞き入っていた。
***
ケルムト渓谷の谷底は、ヴァナヘイム軍の練兵場と化している。
両岸の間が最も広い区域では、部隊運動訓練も展開された。
この訓練には、アルベルト=ミーミル総司令官が督励し、時に自ら采配を振るった。
しかし、さすがのミーミルをもってしても、1人で全部隊を指導して回ることは不可能だ。
そこで、総司令官直属部隊の尉官や下士官たち――ミーミルの同郷にして、これまで彼の部隊運動を具現化してきた者たちが、「監督官」として各隊へ派遣された。
監督官の手には、総司令官手製の「部隊運動 指南書」が握られていた。謄写版で刷られた小冊子には、挿絵が随所に散りばめられ、
監督官の代理指導によるミーミル流練兵が、各隊で始まった。
小太鼓と
喇叭の音を聴き間違えたら「腕立て」、隊列が乱れたら「腹筋」を繰り返し、次第に複雑な集団行動が実現できるようになっていく。
特徴的なのは、将校・下士官・兵――階級を問わず、個人単位で色の異なる鉢巻が配られたことだ。
頭に巻いた布の色により、「健全」・「軽傷」・「重症」・「戦死」と、立場・状況が、都度定められた。戦友が倒れたらどうするのか、小隊指揮官が戦死したら――部隊運動のなかに、様々な状況が織り交ぜられる仕組みだ。
ミーミル流部隊運動において、小隊単位に求められる動きは、従来の下士官・兵の割合では追いつかなくなる。そこで、展開行動に理解があると認められた兵は、次々と下士官に取り立てられた。
小隊規模で形になってくると中隊規模、次いで大隊、連隊と、部隊運動の訓練規模は大きくなっていく。監督官の指示は楽器の音から旗の色へと変わっていった。
そして、A連隊が「戦闘状態」に陥ったと仮定し、他のB大隊・C連隊がどのようにカバーに入るかについて、図面と凸型駒も用いての訓練は、果てしなく繰り返される。
最終段階としては、「戦闘状態」に陥る部隊は、無作為に定められた。突然、実弾膝射に入った友軍をどう補助するのか、各隊指揮官たちは判断を要求されるのである。
訓練終了後、大隊以上の指揮官は、自軍の採った行動について、必ず理由を求められるのだった。
その際、他隊に
論より動の階段将校たち――ヒューキ=シームル・ビル=セーグ――も、総司令官のお言葉を拝聴した。図によって各隊に示された彼等の動きは一目瞭然であり、両名とも目から
階段将校たちは、これまでさまざまな部隊に所属してきたが、ここまできめの細かい教練を受けたためしがなかった。
軍楽の音色や信号旗の組合せにより、味方の各隊が生き物のように陣形を変えられるようになっていく様子は、まるで魔法をかけられているかのようであった。
【作者からのお願い】
この先も「航跡」は続いていきます。
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階段将校たちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢
【予 告】
次回、「部隊運動訓練 下」お楽しみに。
バー・スヴァンプ店内の
階段将校の2人は、杯を手にしたまま気持ちよさそうにテーブルに突っ伏してしまっている。
「明日、オーズ夫人に会う際、これだけは気を付けろ……」
「はい……」
次官が何か大切なことを伝えようとしている――そうだった、首飾りを返却に行かなければ。
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