【9-22】学園生活 ⑧ 電報

【第9章 登場人物】

https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816700429200791009

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 帝国暦373年7月も半ばを過ぎ、あとわずかで、帝国士官学校も夏季休暇を迎えようとしていた。


 抜けるような青空の下、学園に降り注ぐ陽光は、日を追うごとに勢いを増している。


 帝国内の一般的な学校は、既に夏休みに入りはじめている。年間で最も長い休暇を、家族とどのように過ごすのか――士官学校名物・週1「手紙の日」も、気温とともに俄然、賑わいを増していく。


 士官学校生徒は、どれほど高貴な家柄の子弟でも、学園外の親族親友との面会はおろか、電話すらも許されない。その分、手紙の本数は増え、1つ1つが分厚くなるのだ。


 毎週1度、学校に届いた手紙や小包を、当番学生が寮内の生徒に配る仕組みになっているが、この時期は、配達件数・目方めかたともに増え、重労働となる。


 

 しかし、今週もセラ宛の手紙はなかった。


 少年は紅い頭をひねった。


 毎週欠かさず手紙をくれる妹が、もう2週も続けて音沙汰がない。


 もちろん、コナルにも届いていないという。級友は色の異なる頬を、心配そうに左右に振る。



「すまない、袋の底にあったので気がつかなかった」

 一度、セラたちの部屋を過ぎ去った当番学生が戻ってきて、彼に紙片を手渡した。レイス君、君には電報が届いていたよ、と。


 手紙ではなく、電報ということが気になったが、セラは思わず頬がゆるんだ。



 ところが、それは、妹からのものではなかった。


 冒頭の差出人欄には、幼馴染の名前が記されていた。「キイルタ=トラフ」と。


 彼はわずかに首をかしげ、電報用紙に目を通していく。



 その本文には……。













 ――イモウトサマ オカゲンスグレズ スグニ ゴリョウチニ モドラレタシ。






【作者からのお願い】

この先も「航跡」は続いていきます。


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セラとエイネが乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢



【予 告】

次回、「【世界地図】航跡の舞台 ※第9章修正」お楽しみに。


以前作成した「【世界地図】航跡の舞台」へ、これまで登場した帝国内の地名のほか、これから登場する島名や港湾名を落とし込んでみました。

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