【9-13】学園生活 ① 汚物

【第9章 登場人物】

https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816700429200791009

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 士官学校での生活は、3カ月が過ぎようとしてた。


 入学試験こそ席順は20位だったが、その後は、学年トップの地位をセラ=レイスの名前が独占していく。


 の外部入学生が、生意気な――。


 たちまち、上級・中級貴族子弟による嫌がらせが始まった。


 士官学校は、幼年兵学校のなかから成績優秀な者が上がってくる。セラのような外部からの転入組はわずかであった。


 兵学校を勝ち抜いてきた者たちはプライドが高く、転入組など下に見る傾向が強かった。


 まして、ブリクリウ派閥に逆らい没落した貴族になど、何をしても良いと思い込んでいる。


 だが、セラは自らが受けたいじめについては、時には上級生を動かし、必要とあらば教官を利用するなど、必ず3倍以上のむくいをもって応じたのである。




 ある日の午後、体育の授業が終わり教室に戻ると、セラの制服の上着には、動物のものと思われる排泄物が載せられていた。


「没落貴族が士官学校に来てるんじゃねーよ」


「ちょっと成績が良いからって、調子に乗りやがって」


 ジョージ=ベールク以下、男子5人組から嘲笑がぶつけられた。


「……」

 汚れた上着を前に、セラは無言でたたずむだけだった。


 その後も、椅子やロッカーなど、は続いた。だが、週が明けても、紅毛の少年の反応はなかった。



 帝国士官学校は、男女共学である。


 様々な学友と触れ合うことで、見識を広げるためだとか、男女が親しくなりすぎ、学問がおろそかになることを避けるためだとか諸説あるが、各学級では毎週席替えを行っている。


 その席替えのくじ引きの結果、今週のセラたちのクラスでは、最前列をすべて女生徒が占めることになった。


 そのような些末さまつなことなど忘れ、ベールク等、汚物を盛った5人の男子生徒は、次の嫌がらせ方法に花を咲かせるのだった。




 数日後、再び体育が行われた。男子は蹴球サッカーであった。


 前日の雨天のため、校庭はぬかるんでおり、生徒たちは授業を終えた後、一様に泥まみれになっていた。


 折悪く、次の授業は数学であった。


 担当教官は、生活指導官も兼ねており、特に服装や時間等、校則に厳しい。


 上着を羽織らなかったり、アスコットタイを付け忘れたら遅刻扱い、本鈴の際に席についていなければ欠席扱いである。


 急いで泥を落とし、制服に着替えねばならない。



 着替えを済ませると、ベールクら5人とも、どうにも


 彼らの制服のズボンは、替えの下着共々、一様に股間の辺りをハサミか何かで丸く切り取られていたのである。


 ――ニワトリ頭の仕業だろうか。

 おかしい、ヤツは俺らと同じく、体育の授業に出ていたはずだ。


 ――体育で履いていたもので我慢すべきか。

 しかし、下着もズボンもろとも汗と泥まみれである。何より、ズボンが体操着のままでは、あの数学教官によって遅刻扱いにされてしまう。


 股間をくり抜かれたジョージたちが、あれこれ逡巡しゅんじゅんしているうちに、短い休み時間は終わり、次の授業を知らせる本鈴が鳴ってしまった。


 ――この授業だけ、やり過ごせばいい。

 やむなく、彼等は下着ともどもくり抜かれた制服を身に着けた。そして、慌てて席につき、欠席を免れたのである。


 


 何事もなく、数学の授業は進行していく。


 この教官の授業スタイルは、生徒に回答を板書させるものだった。


 回答者は、名字の頭文字順に決められる。


 そして、本日の回答者は、











 汚物仕込みの主犯格・ジョージ=ベールクであった。



 しかも、この日の問題は、内容こそ易しいが、右手にチョーク、左手に黒板用の大型三角定規を用いて、回答を導かねばならないものだった。


「どうした?早く立たんか」

 教官に3度促され、ベールクはしぶしぶ立ち上がった。


 左手で持ったノートを股間に添えて。







【作者からのお願い】

この先も「航跡」は続いていきます。


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【予 告】

次回、「学園生活 ② 図形問題」お楽しみに。


帝都陸軍士官学校の教室では、黒板前でジョージ=ベールク生徒が、絶体絶命のピンチに陥っていた。


課されたのは、折悪く図形問題であった。

解答に導くには、右手にチョーク、左手に黒板用の大型三角定規を用いなければならないのだ。

すなわち、股間を隠すノートを手放さねばならない。

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