【8-8】捕虜 上
【第8章 登場人物】
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816700429051123044
【組織図】帝国東征軍(略図)
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16816927862185728682
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3日間にわたり、帝国軍右翼を散々に蹴散らしたヴァナヘイム軍左翼は、7月23日の午前10時にようやく攻撃を中止し、来た道を引き揚げていった。
アトロン連隊・レイス支隊による激しい抵抗は、一定の効果を発揮したようだ。予想以上の出血を強いられたヴァ軍左翼は、再編を余儀なくされたのだろう。
それに、今日もこれから40度近くまで気温は上がる。
そのようななか、20キロもの装備を背負った兵士たちに、行軍・戦闘を
ヴァナヘイム軍は、引き様も見事だった。
アトロン・レイス両隊はイェロヴェリル平原に打ち捨てられていた。
それは、まるで
セラ=レイスは、
いまごろ、帝国軍総司令部は混乱の極みにあることだろう。援軍の派兵など期待できそうにない。
それでなくとも、輸送もままならない状態の帝国軍である。後方からは弾薬の補充すら当てにできないだろう。
一方で、ヴァ軍の引き揚げが、第2次攻撃の準備に過ぎないことも、彼は承知している。
あの敵司令官のことだ、おそらく中軍ともども補給部隊も平原に前進させているに違いない。
引き揚げていったやつらは、元居たケルムト渓谷内までは戻らず、そのはるか手前で補給を受け、部隊再編を済ませるだろう。
敵が一時後退したこの機に、自分たちも早く退かなければならない。
「なに、敵兵を捕らえただと」
「はい、先ほどまでの戦闘で、所属する部隊からはぐれた模様です」
副官・キイルタ=トラフから、敵兵3名を捕縛したとの報告を受けた時、レイスは
食事と言っても、干し肉を挟んだ硬いパンだけである。それをかじりながら、レイスは撤収にかかわる細かい指示を出していた。
両手のそれに代わる代わるかぶりつきながら、ゴウラ少尉が時折上官に質問していた。小動物のようにそれを
戦闘がひと段落したいまのうちに食べ物を胃袋に詰め込んでおかねば、次にいつ食事にありつけるか、分かったものではない。彼等はそれを心得ていた。
「捕虜など足手まといですね。すぐに処分しますか?」
「いや、そこへ案内してくれ」
干し肉サンドの残りを口のなかに詰め込むと、紅髪の将校は部下たちとともに、黒髪の副官の後に従った。
【作者からのお願い】
この先も「航跡」は続いていきます。
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レイスたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢
【予 告】
次回、「捕虜 中」お楽しみに。
うだるような暑さのなか、3人の男が手を後ろで縛られ、地面に座らされていた。
遠目からもそれが、捕らえられたヴァナヘイム国兵士だとわかった。
「お前たち、どこの地域から送られてきた」
「……墓場だ」
意を決したように1人が口を開くと、他の捕虜たちも口を開く。
「橋のたもと」
「路上で残飯漁りだ」
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