終幕

asai

終幕

病院の一室で、家族の悲痛な叫びが響いていた。


「親父ぃ!しっかりしろよぉ。。」

「おじいちゃん!死んじゃいやだ!」

「あなた、、」


生命維持装置につながれた清志は息も絶え絶えに、目だけうっすら開けて、家族の一言一言を受け止めていた。

涙を流す家族をかすれた目で見渡しながらこれまでの人生を回顧した。


清志は子供の頃から映画が大好きだった。

木の棒を家の中で振り回してスターウォーズごっこをしては親を困らせた。

大人になり、映画に関わりたかったが、そんな才能もなく、普通のサラリーマンとして定年まで働いた。


二人の息子には明、安二郎と有名な映画監督の名前をつけた。

妻の君枝には苦い顔をされたが、二人とも映画の世界に進んでくれて清志は心底嬉しかった。


老後は家に立派なホームシアターを作って、

君枝と一緒に名作と言われる映画を何度も見た。


“よく付き合ってくれたなぁ。”

清志の目から涙がこぼれた。


映画のような山も谷もない、起承転結もない人生だった。


ただこれでよかった。


これがよかったと思える。


“みんなありがとう。”


清志の意識が少しずつ遠のいていく。

走馬灯の代わりにエンドロールが流れはじめた。



  島津 清志 役:島津 清志


  島津 君枝 役:島津 君枝”



自分らしい最後だ。

清志は力なく笑った。


幼い頃の悪友や、仕事でお世話になった人もキャストとして流れていく。


“いい人生だった。”


力が抜けていき、清志はゆっくりと絶命していくのを感じた。

そのときエンドロールが最後の文字をうっすら映した。




  配給:SOMY PICTURES


  監督:フリストファー・ローラン


  ※この物語はハーフフィクションです。”




“え?”


~Fin~



一定のリズムを刻んでいた心電図が無機質な連続音に変わり、

清志の臨終を伝えた。



試写会が終わり、リポーターがマイクを監督に向けた。

「今回リアルな人間をコンピュータ上に作り、彼らの日常的な家族愛を描いた作品ということで、監督として初となる試みでしたがいかがでしょう。」

「そうですね、予算や日程をふまえていうと及第点といったところでしょうか。今回はプロトタイプなので今後撮り直してよりよくしていこうと思います。」

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終幕 asai @asai3

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