第7話 暗がりの敵
「ここが、ダンジョン?!」
聡太は驚愕する。その質問に対して冷静な低いシアの声が応える。
「そうですマスター、理由は分かりませんが私達はダンジョンへ転送されてしまった様です」
「意味がわからん。いや、そんな事よりパトリシアはどこだ?!」
聡太は慌ててシアに聞く。
「申し訳ございません。あの時マスターを庇うので精一杯でパトリシア様は救うことが出来ませんでした」
「そうか...くそ、これからどうする?」
現状は最悪、エリーズは攫われパトリシアとは離ればなれ聡太は頭を抱え苦難する。深呼吸をして聡太は自身の両頬を叩き決心する。
「迷ってる暇は無いな、シア」
「はいマスター」
「ダンジョンの奥に進むぞ」
「了解です」
******
────人生とは道だ、どこの誰かが言っていた。確かに至言だと思う。人生は道、だがその道が自分じゃない他人、環境に左右されていたらどうだ?。それは人の生、人生と呼べるのだろうか?自分の生だと呼べるのだろうか?。少し違う、人生は道では無く、人生とは選択だと思う。選択の連続なのだと。そうした日々の選択が人を前に進ませる。それが人生の在り方なのだと。
******
「──っん」
微睡の中パトリシアは目覚める。意識が朦朧とする中、状況を整理する。
「確か...一ノ瀬君と話していて、そこから...、だめ思い出せない」
考えるうちに意識が覚めパトリシアは顔を上げ辺りを見渡す。
「ここはどこ?」
パトリシアはゆっくりと立ち上がり再度辺りを見渡す。よく見ると暗闇の向こうに石で作った大きな扉がある。パトリシアは扉の方に足を運んだ。
「この扉は一体何かしら?」
パトリシアが石の扉を見ているとパトリシアがの後方から大きな爆発音がした。
「何?!」
パトリシアは振り返る。音は着実にパトリシアの方に近づいていき、壁を壊すと同時にその正体を現した。ゴーレム、体長は約八~九メートル、手に大きな槍の武器を装備している。
「もう、訳が分からないわ」
そう言うとパトリシアはフリークスを呼び出し構える。だがゴーレムの視線はパトリシアには向いていない。不思議に思ったパトリシアはその視線の先を追う。
「一体何を見て...っ?!、やばい!」
爆発の影響で土煙が舞う中パトリシアは歩く人影を見つけ、駆け出す。同時にゴーレムが動き出し、人影に対し槍を振るう。だが、ゴーレム攻撃は人影に当たらず。ブンっと砂煙を切り裂くだけだった。
「危ないところだったわ。怪我は無い貴方?」
「ええ、大丈夫って...君はパトリシア・ヴァン・パリスかい?」
パトリシアはその言葉に顔を向ける。そこには角が特徴的で金色の髪を持つエリーズがパトリシアを見ていた。
「えっと...貴方は...?」
「えー覚えてないの〜、私だよ私エリーズだよ。この間の試験一緒にやったじゃないか」
「うーん...ごめんね覚えてないわ」
「は〜そっか、まぁ無理もないかあの時はいろいろと忙しかったからね。そんなことより今は」
「そうね、とりあえずあのゴーレムを倒しましょう貴方は下がっていて」
「ああ、お願いするよ今の私じゃ役者不足だ」
地響きの様な足音を立てながらゴーレムが二人に近寄ってくる。その巨体の前にパトリシアが立つ。
「来なさい、フリークス!」
パトリシアが手を前に出し構えると大きな衝撃波とともに炎剣フリークスが出現する。
「一撃で終わらせる」
そう言うとパトリシアは剣が顔の右側面来るように構えゴーレムに突貫した。ゴーレムは突貫してくるパトリシアに対して勢いよく槍を突き刺す。パトリシアはバックステップで後ろによける。轟音と同時に砂煙が舞い槍は地面に刺さる。そして砂煙の中からパトリシアが現れ地面に刺さる槍を伝ってゴーレムの直上に飛び上がる。パトリシアは剣に
「消し飛びなさ、大型魔法。
高熱の光が上から下へゴーレムを貫く。ゴーレムは大きな音ともに膝から崩れ落ち倒れた。
「意外ともろいわね」
思いのほかゴーレムが簡単に倒れ安堵したパトリシアにエリーズが拍手しながら近寄てくる。
「凄いなパリスさんの魔法は」
「パトリシアでいいわ、学年は同じなんだから敬語は必要ないわ」
「ああ、分かった。ふふ、では私もエリーズと呼んでくれ」
「どうしたの?」
「いや違うよ。私のイメージのパトリシアもっとプライドが高くて、高貴な感じで誰も近づけない、そんなイメージだったから」
「え?!」
「どうしたんだい?」
パトリシアは引きつった表情でエリーズに聞く。
「ねぇエリーズ、私ってもしかして周りから変な感じで見られてるのかな?」
「うーん、変な感じて言うより、ヤバい感じだね」
パトリシアはエリーズの言葉で膝をつく。
「い...一体どこで間違ったの?」
「それは、あのパンツ事件しかないだろう」
「あれは...だって」
パトリシアは赤面してうつむく。パトリシアは保健室の事を思い出し赤面した顔を上げてあわただしく言う。
「思い出したは。エリーズ貴方だって!一ノ瀬君と、あ、あんな...こと...」
「無理して言わなくていいよー」
「無理なんてしてない!」
*************
ドッゴンっといゆう轟音と振動が聡太達に伝わる。
「マスター、ここより下の階層で
「パトリシアか?」
「周囲の魔力が濃い為断定できませんが恐らくパトリシア様の
「分かった進むぞシア」
「了解です」
薄暗いダンジョンの道を進んでいると大きな空間が広がり奥には大きな扉がある部屋に聡太達は着いた。
暗がりが支配する空間に突如明かりが灯り聡太達の目の前に騎士の姿を模したゴーレムが三体現れる。
「シア、警戒態勢を取れ」
「はい」
それぞれのゴーレムは剣、斧、弓を装備していた。三体のゴーレムは聡太達に反応してゆっくりと体を動かす。三体のゴーレムは縦列に前から剣、斧、弓で編成を組んで武器を構える。
「シアくるぞ」
「はい」
前衛の剣を持ったゴーレムが剣を振り翳しシアに突撃してくる。シアはゴーレムが振り下ろす剣を紙一重で避けゴーレムの頭部に右ストレートで応戦した。
「フッ!」
ゴーレムの頭は核もろとも飛散し体は一回転して後方に飛んで行った。
「ゴーレム弱点は頭部にある核を壊せば...?!」
シアと聡太は驚いていた。普通なら壊れて動かないはずのゴーレムが体をゆっくりと起こしてシアに破壊された頭部を修復していたからだ。
「シア、あれはどうなっている?」
「確認中です」
シアは魔力探知を使い
「分かりました。ゴーレム達の魔力核が繋がり一個になっています」
「一個?」
「はい、通常ならゴーレム一体につき魔力核が一個なのですが。このゴーレム達は魔力核を繋げて一つにすることにより三体のうちどれが壊れてもすぐに復活できる状態を作っています」
「つまりは三位一体か」
「そのとうりです」
「なら、話は簡単だな。まとめて壊せばいい」
「どうしますかマスター?」
「俺が魔術で壊す、シアは足止めをよろしく」
「了解です」
聡太が後方に下がりシアがゴーレム達の前に立つシアは武器をだす。
「アーカイブに接続リソースを展開します。魔具、真皇鎧インペリアル・アーマーを部分展開。左右、腕部と脚部に展開します」
シアの腕と脚に
「マスター準備完了です。いつでも行けます」
「わかった。俺が魔術を発動したタイミングで行動開始だ」
「了解」
シアは前傾姿勢になり構え、聡太はポケットからチョークを出し魔法陣を書き上げる。
「行くぞシア!。水魔術、ミスト」
聡太の魔法陣から霧が勢いよく放出し、辺り一帯に広がる。それと同時に剣を持ったゴーレムが動きだし攻撃を繰り出す。だがその攻撃は魔具を纏ったシアによって片手で受け止められる。ゴーレムの攻撃はすさまじく、剣を受け止めているシアの両足が地面にめり込む程の威力を持っていた。だがシアは冷静沈着な表情で剣を受け止め。そしてシアは軽く息を吐き魔具の能力を発動させた。
「真帝の前に屈服せよ」
剣を持ったゴーレムが地面に減り込んだ。剣を持ったゴーレムを抑えていると霧の中から斧を持ったゴーレムが飛び出しシアに斧を振りかざす。シアは先ほどと同様に斧を片手で受け止め言う。
「真帝の前から飛散せよ」
斧持ったゴーレムは核を残し斧ごと粒状になり消える。
「次は弓を持ったゴーレム。目に見える範囲にはいない、なら魔力探知で」
シアは意識を集中し周囲の
ゴーレムはこちらを向いたまま弓を下ろし停止している。まるで何かを待っているように。シアは怪しい動きをするゴーレムに対し動こうとした瞬間、シアの頭上から一つの魔力反応を確認する。
「攻撃?...いや、これは?!。マスター!」
シアは頭上の
「シア!」
「お任せください。マスターこの程度の攻撃、造作もないです。それより作業の方を進めてください。」
「あと少しで魔法陣が出来上がるそれまで耐えてくれ」
無数の
「マスター、先ほど倒した二体のゴーレムが復活しました」
「ああ、だがこちらも完成したぞ。シア、防御結界を解除して防御に徹してくれ追撃はするな、魔術を発動する時間を稼げばいい。俺が合図したら後方に下がってきてくれ」
「了解です」
シアが防御結界を解き聡太の前に出る。聡太は完成した魔法陣に魔力を込め始める。その魔力に反応したように、復活したゴーレム二体が聡太に襲い掛かる。だがゴーレム達の攻撃はシアによって防がれる。同時に聡太がシアに合図を送る。
「シア下がれ!」
シアはゴーレム達を弾き飛ばしバックステップで聡太の後方に下がる。シアが後ろに下がったと同時に聡太は魔術を発動した。
「複合魔術、フローンズ・フィールド!」
冷気が魔法陣から放たれゴーレム達を襲い、冷えついた空気と沈黙がその場に広がる。だがその沈黙はゆっくりと破られる。
「前方に魔力反応、マスター下がってください」
シアが聡太の前に出る。聡太は前に出たシアの肩を掴み言う。
「俺は
シアと聡太の前にゴーレム達が現れる。ゴーレム達はゆっくりと聡太とシアに近づいているがどこか様子がおかしかった。だがその異常はすぐに形として現れた。ゴーレム達はゆっくりと凍っていた。それはまるで植物が分厚いコンクリートから生える様に確実にゆっくりと凍っていった。
「マスターこれは...」
「過冷却現象、水が一定の温度で下回っても凍らいない現象。だが少しでも衝撃などを与えると水は液体から個体に変化する」
ゴーレム達はそのまま凍っていきその動きを停止させた。
「普通の方法じゃこの現象は起きないから俺は少し一番初めに使用した魔術に細工をした。初めに使用した魔術の水分を凍る手前で固定し、俺はその水分をゴーレム達にしみこませた。そして最後の魔術で一気に周囲を冷やす事でゴーレム達の中の水分は一定ラインを超えそして、自ら動く衝撃で関節部分から凍っていき最終的には核をも凍らせ動きを停止した」
「さすがです、マスター」
「いや、シアこそ敵の足止めをありがとうシアがいなかったらすぐに死んでいたと思うし。それと...うっ!あーっくっそシア後はまかせ...た」
意識を失い倒れ行く聡太をシアはそっと支える。
「お任せくださいマスター」
シアは聡太の頭を撫で開いた扉の奥に聡太を負ぶって進んで行った。
機械真祖と魔法使い たたろう @renzi1414
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。機械真祖と魔法使いの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます