春のスポーツ大会!決着!(2)

 クラスの勢いも最高潮。

 何がなんでも出塁してやると言う気迫が相手チームに伝わったのか、何故か7点差のリードもなくなり、同点まで追いついた。


 しかし、現在最終回。

 残すところ裏の攻撃のみとなってしまった。


「……ピッチャー誰行くよ?」


「……そうだな。ここまで来たら相手に点なんかやってたまるか」


「けど、次の攻撃はクリーンナップよ」


 ベンチからそんな声が聞こえる。

 ……確かに、最後は誰がマウンドに行くか悩むな。


 ピッチャーができる人材はルール上交代させてしまったし、残るのは守備を守っているやつをマウンドにあげるしかない。


 ……俺も是非ともピッチャーをしたいのだが、1度出場してベンチに戻ったメンバーは出場できない。

 なので、一輝当たりをピッチャーにしたい所なのだが、それだと最終回の打席に回ってこない可能性が高い。


 ……うぅむ、一体どうしようかな。


「少年、もし良かったら俺が投げようか?」


 俺が顎に手を当てて悩んでいると、見かねた先輩が声をかけてきた。


 ……盲点だった。

 先輩がまだ出場していないということを見落としてしまった。


 男の中の男である先輩なら、きっとピッチャーも簡単にこなしてくれるに違いない!


「是非ともお願いします!」


「任せてくれ!」



 ♦♦♦



「いや……これは困ったね」


 マウンドからそんな先輩の声が聞こえてくる。


 現在2死満塁。

 後アウト一つで終わるという状況で、満塁というピンチに陥ってしまった。


 決して先輩の球が悪くて打たれまくったとか、守備がエラーしてしまったという訳では無い。

 先輩は流石と言うべきか、素晴らしい球を投げてくれて、男子連中を三振に討ち取ってくれた。

 ……問題はその後なのだ。


「くっ……中々やるじゃないか」


「先輩!悔しがってますけど、そのランナー全員四球ですからね!?」


 しかも全員女子。

「あ、君塁に出たい?」「だったらいいよ。その代わりーーーーー」などなど。


 この局面で、あろうことか先輩は女子が打席に立つ度に歩かせている。

 当然、クラスの男子達からは鋭い殺意のこもった視線を浴びており、もしかしたらベンチに戻った時が、先輩の命日かもしれない。

 一方で、女子達からは「なんて優しいの!」と、何故か好感度が上がっていた。


 おかしいよね、イケメンって何をしても好感度が上がるんだから。


 しかし、そんな女子達とは違い、うちの3大美女様方々はその光景にイラついていた。


「……結城先輩」


「もう!真面目にやってよ陽介くん!」


「後で窓から落としましょうかね」


 1人だけ物騒な発言をしているが、今回ばかりは擁護できない。

 先輩はそんな西条院の圧を感じたのか、マウンドで1人身震いをした。


 そして、今の打席は女子ではなく男子生徒。

 けど、確かあの人は野球部だったはずだよな?

 ……こんな場面で野球部が回ってくるなんて、ついていな『ストライク!バッターアウト!』……流石っす先輩。


 さて、これで最後の攻撃。

 一輝!ここで見せ場を作ってアピールするんだぞ!



 ……その前に、先輩に説教しないと。



 ♦♦♦



 俺はベンチ前でじっと監督のごとく選手を見守っていた。

 ちなみに、今先輩は西条院にこってり絞られている。


『ストライク!バッターアウト!』


「すまん……」


「気にするな山田。相手が悪かった」


 俺は肩を落として戻ってくる山田に声をかける。


 こればっかりは仕方ない。

 まさか向こうが最終回に野球部のエースをもってくるとは思わなかった。


 連中め……っ!

 真面目にやっていないと思ったら、こんな時だけ本気になりやがって!


 ちなみに、時間の都合上延長というシステムはない。

 つまり、この回点を取れなかったら同点ーーーーー優勝は2組ということになってしまう。

 しかし、それでは一輝の約束を果たせない。


『勝ったらデート』という約束に引き分けは無意味なのだから。


 ……しかし、一体どうすべきか。

 いくら一輝の最高潮なやる気でも、野球部エース相手にホームランは難しい。

 少なくともヒットは打てるだろうが、問題はランナーがいること。

 でないと、後続が続きそうにない。


「時森さん、私が次の打席にいってもよろしいでしょうか?」


 俺が監督よろしく頭を悩ませていると、後ろからヘルメットを被った西条院が声をかけてくる。


「……いけるのか、西条院?」


「私を誰だと思っているのですか?……あなたの、隣に立ちたいと思っている女の子ですよ?」


「ッ!?」


 その発言に、思わず顔が赤くなってしまう。

 まさか、こんなに正面から好意を言われると思っていなかった。

 ……西条院さん、告白してから逞しくなりましたよね。


「……じゃあ、お願いしてもいい?」


「任せてください。その代わり、私もこの試合に勝てたらご褒美欲しいですね」


「……それは一輝に言ってくれ」


「ふふっ、分かりましたよ」


 そう言って、柊は代打としてバッターボックスに向かった。


 その背中を見ると、俺は何故か必ず塁に出るのではないか?と思ってしまう。

 現実的に、運動神経がいい西条院でも野球部のエース相手では難しいのは分かっている。


 しかし、それを感じさせないオーラが、今の西条院からは感じられた。

 それは俺が西条院を信用しているからなのか、恋する乙女は強いからなのか。



 それは分からないが、俺は西条院が塁に出ることをベンチで見守るのであった。


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 ※作者からのコメント


 お久しぶりです!プロットデータ消えて泣きそうな楓原こうたです!

 章タイトルを変更して、この章も残すところ後2話となりました!

 今回の話は、読者的にもあまり面白くなかったのでは?と思ってしまった自分がいます。


 それでも、最後までお付き合いしていただければと思います!

 ちなみに次の章はーーーーーー


 兎に角、これからもよろしくお願いします!

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