エピローグ〜この特別な日に俺は〜

 時刻は22時ちょうど。

 俺は自室のベッドで1人横になっていた。


「今日は……色んなことがあったな」


 ……バレンタインデー。

 今まで、俺はこの日を楽しみにしていた。


 というのも、男からすれば異性からチョコを貰えるというのは嬉しいもので、他の女子から貰えないかと、そわそわしていたものだ。


 毎年、麻耶ねぇからはチョコを貰っていた。もちろん、嬉しかったさ。

 けど、それは姉としてくれていたのだと思っていたんだ。


 ……けど、今思えば違っていたんだと思う。


 それを、今日という特別な日に思い知らされてしまった。


 ……始まりは、西条院と神楽坂に告白の練習を見られた時。

 そして、彼氏を作る手伝いをして欲しいとお願いされたあの時。


 俺の中の物語は進んでしまったのだと思う。


 始めは、俺は彼女たちを友達だと思っていた。

 面倒をかけるやつだなと思いつつ、あいつらはどこか一緒にいて楽しいなと思い始めていたんだ。


 けど……そう思っていたのは俺だけだった。


 麻耶ねぇも、西条院も、神楽坂も。

 彼女たちはそれぞれ想いは変わっていて……それが、俺に向いていた。


 あぁ……そうなんだ。

 俺だけが、今の現状に満足していたのか、と。


 そう初めて気付かされたのは、神楽坂が俺に告白してきた時。

 彼女の想いを知って、自分だけがその先へと行こうとしなかったんだ。

 そう思い知らされた。


 友達だと思っていた。

 いつも一緒にいることが当たり前で、変わることの無い大切な友達なんだ……そう思っていた。


 それが、俺だけなんだとも思わずに。


 ……それから、俺の周りを見る目は変わっていった。

 友達だと思っていた神楽坂も、異性の女の子のように感じ始め、西条院も麻耶ねぇも……何気ない彼女達の行動に、胸が高まる気がした。


 これが……恋、何だろうか?


『彼女が欲しい』。

 その目的のために、俺は高校生活を送ってきた。

 ……しかし、その目標に1歩俺が前に進めば届いてしまう立ち位置にいる。


 今日、初めて麻耶ねぇと西条院に告白された。

 あんな美少女達に、何で俺が告白されたのか?まさか俺が告白されるなんて……今でもそう思っている。


 しかし、それは俺の欺瞞で、彼女達はそれぞれの想いがあって俺の事を好きになってくれたんだ。

 だからこそ、俺は真剣に彼女たちに向き合わなくてはいけない。


 俺の事を好きになってくれた。

 それぞれ、何で好きになったのか……その理由も聞いた。


 彼女達は、自分の気持ちに答えを出して、言葉にした。

 だから……次は俺の番なんだ。


 ーーーーーけど、


「俺自身が、答えを出し切れていないんだよな……」


 俺は灯りが消えた、暗い部屋の天井を見やる。

 何も見えない、書かれていない天井を見て、頭がクリアになっていくのを感じた。


 俺は実際に彼女達をどう思っているのか?

 少し前の俺だったら、『友達』と答えていただろう。


 けど、それは今は違っている。


 神楽坂は、今では俺の同居人で、俺が落ち込んだ時に支えてくれる太陽のような存在。

 西条院は、俺が挫けそうになったら支えてくれる頼りになる存在。

 麻耶ねぇは、昔からそばに居てくれて笑顔にさせてくれる安心的な存在。


 ……彼女達一人一人に、俺は支えられてきた。

 そして、今は……彼女達は俺の大切な存在になってしまっている。


「俺はどうすればいいんだ……?」


 彼女達全員が、俺の大切な人。

 その人達から、たった1人の大切な存在を選ばなくてはならない。


 ラブコメの主人公は、どのような気持ちで数多のヒロインの中から1人を選んだのだろうか?


 顔?容姿?性格?

 ……どれを判断基準にしたのか?


 本当にすごいと思う。

 魅力的なヒロインの中から、自分の答えを出して1人を選んだ主人公が。


 ……俺には、あまりに眩しすぎる。


 西条院も、神楽坂も、麻耶ねぇも。

 全員、とても魅力的な女性だ。


 そんな彼女達に好意を寄せられているなんて、俺はとても幸せものだと思う。

 だからこそ、俺は眩しい主人公みたいに、己の気持ちに正直に1人を選ぶなんて難しすぎる。


 あぁ……本当に。

 嬉しいさ。嬉しいに決まっている。


 俺も彼女達のこと好きだし、ずっと一緒にいたいと思っている。

 けど、それが恋なのかと言えれば……怪しい。


 いや、自分でもよく分かっていないんだ。

 彼女達に寄せる想いが、恋なのか親愛なのか?


 ……我ながら、情けないと思う。


 けど、情けない俺なりに考えていきたい。

 焦って答えを出すのではなく、自分なりに納得出来る答えを出して、彼女達に想いを伝えたい。


 いつになるか分からないけど。

 けど、できるだけ早く伝えたいと思う。


 ……その瞬間、俺達の物語は結末に向かうのだろう。


『彼女が欲しい』と『彼氏が欲しい』。

 その目標から始まったこの物語。


 それは、彼女達が答えを出し、俺が答えることによってエピローグを迎える。


 ……本当に、まさか俺がこんな立場になると思わなかったさ。


 彼女なんてできない。


 彼女が欲しくて努力していた俺は、心の片隅ではそう思っていたのだと思う。

 だからこそ、彼女達から想いを寄せられている現状に戸惑ってしまった。


 ……けど、それももう終わりにしよう。


 時間はかかってしまうけど。

 彼女達を待たせてしまうかもしれないけど。


 俺は自分なりの答えを出そう。







 俺達の物語はーーーー俺が終わらせる。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


※作者からのコメント


いつもありがとうございます!

楓原 こうたです!


物語も第5章が終わりました!

これも、皆さんのおかげです。

本当にありがとうございます。


さて、ここまでで全ヒロイン告白した訳ですが、作者は悩んでいます。

このまま続けるのか、綺麗に終わらせるのか……。


まぁ、終わらせるにしても、私や読者の皆様が納得できるような話にしていきたいと思います!

なので、これからも応援やコメントよろしくお願いします!

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