胸には偉大なヒーリング効果が!?

「やっぱり、麻耶ねぇがこの教室にいると違和感しかないよなぁ」


 俺は卵焼きを頬張りながらそんなことを口にする。


「えぇ〜、そうかな〜?」


「そうだよ。だって見てみろよ周り」


 俺がそう言うと、麻耶ねぇは首を回して教室を見る。


 ほんと、違和感しかないんだよねぇ。

 1人だけ大人っぽいというか、なんというか……上手く言葉に出来ないけど。


「確かに、麻耶さんだけ大人っぽく見えますよね」


「そうかな〜、ちょっとおねぇちゃん嬉しいな〜」


 そして、こうして1人だけ間の抜けた雰囲気を醸し出しているのも、違和感のひとつかもしれない。


「でも、このクラスって面白い人達がいっぱい集まってるよね〜」


「それには私も同意ですね」


 麻耶ねぇの発言に、西条院が弁当を食べながら同意する。


「まぁ、確かに無駄にイケメンな野郎と、欲望に忠実なチンパンジー達が集まっているからな」


「ふふっ、あなたもそのうちの1人ですよ」


 おいこら、西条院。

 そのうちってどっちだよ?

 イケメンの方だよな?チンパンジーの方の事を言っているんじゃないよな?


「だ、大丈夫だよ時森くん!私はちゃんと人だと思っているから!」


「人じゃなかったら、なんだと思っているんだ?」


 こいつら、俺を馬鹿にしてんのか?


「麻耶さんのクラスはどうなんですか?」


「ん、私のクラス?面白い人達ばっかだよ〜!この教室ほど頭のおかしい人はいないけど」


 ……やっぱり、このクラスがおかしかったのか。

 通りで血の気が多いチンパンジーしかいないと思ったよ。

 1部おかしな人もいるが、このクラスは動物園の如くチンパンジーが収納されているからな。

 ……全く、やだね〜、このクラスはチンパンジーばかりで。


「そういえば望くん」


 俺がこのクラスに呆れていると、横から麻耶ねぇに肩を叩かれた。


「何であんなにカレンダーがデコレーションされてるの?」


 そして、黒板横にあるカレンダーを指さす。

 そこには、以前説明したかもしれないが、14日に派手派手なくらいのデコレーションがされてあるカレンダーがあった。


「……聞くな麻耶ねぇ。これには深い理由があるんだ」


 本当に、あれには深い理由があるんだ。

 去年のあの時とは違うんだ、俺達は成長したんだと、己に言い聞かせ、勝負の日を覚悟を決めて迎えるために、ああして分かりやすくデコレーションしているのだ。

 だから、決して女子達にバレンタインデーをアピールしているわけではーーーーー


「もうすぐバレンタインだからですよ!」


「えぇ、だから彼らはチョコ欲しさにこうしてバレンタインをアピールしているんです」


「ほぇ〜、そうなんだ!確か、明日がバレンタインだったね〜」


 こら、俺が折角男子達の切なる欲望を誤魔化そうとしていたのに、何でバラしてしまうのかねこの子達は?


「望くんもチョコ欲しいの?」


「恥ずかしいが、土下座してでも欲しいくらいだな」


「本当に恥ずかしいね……」


「そこまでしてチョコが欲しいのですか?」


 だまらっしゃい!

 俺は一輝とは違って、自然にチョコを貰えるわけじゃないんだよ!

 こうして必死にお願いしてやっと貰えるの!分かった!?


「大丈夫望くん!今年もおねえちゃんがチョコあげるから!」


「うっ……麻耶ねぇ……!」


 なんて優しいお姉ちゃん何だ…!

 こんな姉をもって俺は幸せ者だよ……!


「麻耶ねぇ〜!」


「うんうん、よしよし」


 そして、俺は麻耶ねぇの胸元に飛び込む。

 麻耶ねぇも、そんな俺を優しく抱きとめ、頭を撫でてくれた。


「うぅ…!やっぱり俺には麻耶ねぇだけだよぉ!神楽坂と西条院はチョコくれないし、やっぱり麻耶ねぇが1番だよぉ……」


「……え?」


 すると、麻耶ねぇは何か驚いたのか、目をぱちくりさせて神楽坂を見る。


「あ、あのですね…っ!」


 それに慌てた神楽坂は、麻耶ねぇの耳元で小声で話した。


「……チョコは渡しますけど、どうせならサプライズで渡そうかなって」


「……なるほどね〜、一緒に練習したのに渡さないのかと思ったよ〜」


 おかしいな?こんなにも二人が近くで話しているのに、全く会話が聞こえないや。

 この柔らかい感触に意識が持っていかれているからだろうか?

 ……やばい、何故か頭がぽわぽわして何も考えられない。

 麻耶ねぇのおっぱいって、傷ついた心を癒してくれるヒーリング効果まであるのかな?


 俺はふと横目で西条院を見る。


 あの貧相な未開拓地に顔を埋めてみたらどんな感じなのだろうか?

 麻耶ねぇの東京都市がヒーリング効果だったら、きっと西条院の未開拓地は硬さが目立つことにより、関節があらぬ方向に曲がって至る頃から関節が外れる音という悲鳴がーーーーー


「ふふっ、今誰の胸が未開拓地って言いました?」


「痛い!?痛いです西条院様!俺別に何も言っていませんよ!?」


「頭の中で思っていたら同じことですよ」


「あぎゃーーーー!!!」


 俺は関節が外れる痛みにより、教室に響くほどの悲鳴をあげる。


 痛い!マジで痛い!

 どうして西条院は麻耶ねぇに抱きしめられているのに、綺麗に関節が決めれるのかしら!?西条院ってもうこの道で将来歩んでもいいと思うのよ!?

 きっとプロになれるから!関節決めれるプロになれるから!


 俺はあまりの痛みに、思わず麻耶ねぇから離れてしまう。

 すると、体が傾き大きく後ろに倒れた俺をーーーーー


「どうですか、時森さん?」


 西条院が優しく俺を抱きとめてくれた。


 ……けど……どうって……どうって言われてもさぁ?


「……素晴らしいです」


 俺は西条院の胸に顔を埋めながら、思わずそう口にしてしまった。


 ……貧相な未開拓地馬鹿にしてすみませんでした。


 意外と柔らかいのですね。

 小ぶりな胸は、絶妙なポイントで俺の顔を受け止めてくれるし……何故か、妙な安心感を感じる。

 麻耶ねぇの豊満な胸が『癒し』だとしたら、西条院の慎ましい胸は『安心』なのではなかろうか?


「……もう少し、このままでお願いします」


「ふふっ、構いませんよ」


 俺がお願いすると、西条院は小さく笑って頷いてくれた。


『おい、時森が西条院の胸に顔を埋めてやがるぞ!』


『おい!死刑の準備を進めるんだ!』


『羨ましいなぁ〜、もう殺すしかないよねぇ〜』


 ……何やら、周りが騒がしいな。

 もうちょっと静かにしてくれないのかね?

 そんな鈍器なんか構え始めて一体何を始めるのかしら?


 ……まぁ、いっか。

 もうちょっとこのまま、西条院の胸の感触を味わっておこう。






 結局、俺は昼休憩が終わるまで、西条院の胸を堪能しました。

 その後、俺の身に何が起こったのかーーーーー読者の皆様なら想像がつくだろう。



 こうして、今日も今日とて一日が終わる。






 そして時は過ぎ、俺達はいよいよバレンタインデーを迎えるのであった。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 ※作者からのコメント


 読者の皆様お待たせしました!

 ついに次回からバレンタイン突入です!

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