新学期!相変わらず皆は変わらない!

 少し長い冬休みも終わり、ついに新学期の登校日を迎えた。

 あちらこちらには積もった雪が転んでいて、相も変わらずマフラーと手袋が必要なほどまだ外は寒い。

 まぁ、1月だし当たり前なんだが。


 新学期になり、学校に訪れた俺は久しぶりに会った面々に懐かしさを感じてしまう。

 少ししか経っていないのに、随分と久しぶりに感じてしまうのはきっと年があけてしまったことと関係があるのだろう。


 ……本当に、久しぶりだなぁ。


 俺は教室で1人、感慨深く感じていた。

 今、目の前に広がる光景も、どうしてか胸に込み上げてくるものがある。

 みんな……本当に久しぶりだな。


「おい時森ぃ……朝っぱらからどういうことだ?あぁん!?」


「神楽坂さんと一緒に登校なんていい度胸じゃねぇか?」


「えぇーっと、コンクリに埋める準備はできたし……そろそろ殺っちゃおうかぁ〜」


 ……本当に久しぶりだなぁ。

 俺はクラスのみんなに久しぶりに会えた嬉しさと、これから起こる惨劇に恐怖を感じ、思わず涙ぐんでしまう。


 目の前に広がるのは、鈍器を持ったクラスメイトが殺気むき出しで処刑準備を進めている光景。

 ……うぅ、新学期にもなったのに、なんでみんな成長してないのかなぁ?


「待て待てお前ら、新年にもなって久ぶりに会ったクラスメイトに酷いじゃないか」


 俺は全身を縛られ、逆さまに吊るされながらクラスメイトに訴える。


 こんなことするなんておかしいと思うんだよ?

 君たちはもうちょっと、クラスメイトに対する思いやりを持って欲しい。


「そうだな、確かに新年早々悪いことをしていると思っている」


 そう言って、山田くんは俯いて山田くんはうつむいて振りかざしていた振りかざしていた金属バットを床に下ろす。

 ……良かった、みんな新年もあけて脳みそが嫉妬に狂った猿レベルから、嫉妬に狂った人間の話が通じる脳みそに成長してくれていたようだ。


「けど、クラスの秩序を守るため……どうしても必要な行為なんだ!」


「どこが!?」


 待って何!?クラスの秩序を守る為って、俺関係ないでしょ!?

 俺が死んだら秩序が守られるわけ!?

 教えてよWikipe〇ia!


「どこがってお前……俺達がお前を殺したくて勉強に集中出来ないからに決まっているだろう?」


「……こいつらっ!」


 俺は思わず歯ぎしりしてしまう。


 普段から真面目に授業を受けていないくせに、何が集中できないだ!

 ただ単に俺を殺りたいだけじゃないか!


「じゃあ、そろそろ殺っちゃおうか〜」


「そうだな、先生が来る前に殺っておくか」


「とりあえず、机に血がつかないように気をつけながら殴るか」


 そう言って、男子達は各々の持参した武器を構えてジリジリと詰め寄ってくる。


 ……まずい!

 このままだと俺が新学期早々保健室送りにされてしまう!


 何か……何かこの状況を打破する方法は無いのか!


 しかし、俺の両手両足はがっちり縛られていて身動きが取れない状態にある。


 ……くそっ!ここまでか!


 お父さんお母さん、僕の命はここまでのようです。

 今までありがとう!どうせだったら童貞を捨ててから死にたかったです!


「待って!!!」


 俺が人生に諦めようとしていると、教室の隅っこから誰かが大声で止めてきた。


「神楽坂……」


 なんと、止めてきたのは銀髪の髪をなびかせている神楽坂だった。


 もしかして…俺を助けようとしてくれているのか?


 俺はそう思い、神楽坂の方に視線を向ける。

 すると、神楽坂は胸の前に小さく拳を握り、俺の方を見てゆっくりと頷く。


 ……なんと、本当に助けようとしてくれているらしい。


 俺は思わず涙が出そうになる。

 嬉しい……この窮地を救ってくれようとしてくれることがこんなにも嬉しい事だったなんてッ!

 是非とも頑張ってくれ神楽坂!俺の明日の為に!


「みんな落ち着いて!そんなことしちゃダメだよ!」


 神楽坂は俺たちの方に近ずき、男子達に向かって可愛らしい声で呼びかける。


「神楽坂さん……」


「今日も……かわゆい!抱きつきたい!」


「あぁ……我が天使よ…私に慈愛のキスを…」


 男子達は神楽坂が現れた途端、一斉に武器を下ろして神楽坂を見ていた。

 しかし、何故だろう?みんなの発言が気持ち悪く感じるのは……。


「みんな友達でしょ!?友達だったら仲良くしようよ!」


 ……成長したな。

 昔の神楽坂だったら、こういう勇気を振り絞って助けに来てくれることなんて無かったというのに……。

 彼女なりに前に進んでいることに嬉しくて思わず涙ぐんでしまう。


「そうだよな……神楽坂さんの言う通りだ」


「友達には、こんなことしちゃいけないよな…」


「ごめんね〜…神楽坂ちゃ〜ん…」


 神楽坂の思いが届いたのか、男子達は神楽坂に背を向けて、武器を下ろす。


 ……良かった、これで俺の明日は守られたようだ。

 ありがとう神楽坂。このご恩は一生忘れないよ。


「友達にはこんなことをしちゃいけない―――――だから」


 しかし、何故か男子達は下ろした武器を再び持ち上げ、俺の方に向かって振り上げた。


「「「今すぐ友達やめるぞ」」」


「「え?」」


 男子達の発言に、俺と神楽坂は思わず驚き声を上げる。


 友達やめちゃうの?

 そこまで俺に対する嫉妬心が強かったの君達?


「待って、本当に待って!俺達友達じゃないか!?」


「だから言っただろう?友達をやめるって」


「友達じゃなかったら殺っちゃってもいいよね〜」


「さぁ時森、歯を食いしばれ」


「ちょ、まっ、……いや――――――っ!!!」



 教室に俺の絶叫が響き渡る。

 神楽坂はその光景を見て目を丸くしていたが、俺は全身に鈍い音と骨が折れる音が聞こえるという無慈悲な惨劇を迎えてしまった。



 ……お前らもう友達じゃねぇよ!



 こんな騒動がありながらも、こうして俺たちの新学期が始まっていった。


 ♦♦♦



(※麻耶視点)


「おっはよ〜!」


 私は勢いよくドアを開ける。

 すると、近くにいる友達が「おはよ〜」と声をかけてきてくれた。


 うんうん!新学期が始まると嬉しくなっちゃうよね!


 このクラスは好きな人ばかりだ。

 みんな仲良くしてくれるし、陽介くんも同じクラスだから楽しいしね!


「朝から元気だね〜」


「さすが麻耶だよ」


「うんうん!ありがとう!」


 私は友達に軽く褒められながらも自分の席に向かう。

 私ってそんなに明るいかな?


 私は友達に褒められて嬉しく感じながらも、自分の席に座った。

 じゃあ、とりあえず授業の準備だけでもしようかな!


 不意に、教室の隅にいるクラスメイトから視線を感じる。

 す私はその方向を向くと、何故か教室の隅っこにいるクラスの男女がヒソヒソとこちらを見ながら喋っている姿が見えた。


 ……どうしたんだろう?


 私、今日何かおかしいかな?

 そんなことを思いながらも、私は机の中のノートを机に出す。

 ―――――しかし、


「―――――え?」


 引き出しから出てきたのは、ボロボロになっていたノートだった。

 このノートはそこまで使い込んでいないはずで、ここまでボロボロになることなんてない。


 私はそっとノートのページをめくる。

 すると、そこには大きな文字で色んな事が書かれていた。


『死ね』

『調子にのんな』

『このブス!』


「……どうして」


 過去の記憶が蘇る。

 どうして……どうしてまたこんなことが起きてるの……?

 ここでも、私を追い詰めようとしてくるのかな……?


「麻耶おはよう―――――これは……ッ!?」


 すると、後ろから陽介くんがやって来て、私が持っているノートを見て驚く。


「どうしたんだ麻耶!?……このノートは一体!?」


「ねぇ、陽介くん――――――」


 私は振り返り、陽介くんに向かって真っ直ぐ言い放つ。












「この事は、望くんには絶対に言わないで」



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 ※作者からのコメント


 皆さんお久しぶりです!

 文章力が低い楓原こうたです!


 やっと麻耶視点のお話が書けました!

 桜学祭編やクリスマス編とはちょっと違う書き方をしてみたのですがいかがでしょうか?

 本題に入る前のお話が長くてすみませんm(_ _)m



 これからも楽しんでいただけていると嬉しいです!

 何はともあれ、コメントや応援を下さた皆さんに感謝と、これからも下手な私をよろしくお願いします!

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