初詣はみんなと一緒に

 新年もあけ、新しい1年を迎えるもう去年は過去になってしまい、今からの1年こそ今になる。

 俺と神楽坂は麻耶ねぇ家で年越しをして、現在近くの神社まで足を運んでいた。


「うわぁー!結構人がいっぱいいるね!」


「そうだね〜。ここ意外におっきい神社だから〜」


 横では可愛らしい着物に身を包んだ神楽坂と、大人っぽい着物を着た麻耶ねぇがいる。

 ……うんうん、2人とも大変よく似合っているよ。

 お兄さんは思わず鼻の下が伸びそうだ。


「ここの入口で待ってればいいんだよね?」


「あぁ、待ち合わせ場所はここだからな」


 神社に着いた俺たちはすぐさま移動する。

 そして俺達は人混みを避け、彼女達が来るまで大人しく神社の入口で時間を潰す。


 ……コラコラ神楽坂ちゃんよ。あまりキョロキョロしないでくれ。

 そんなことしたら目立ってしまうでしょうに。


 もし、クラスの連中に見られたらどうするつもりかね?

 一緒にいる俺は間違いなく処刑場にレディGOだよ?

 被害にあうの俺だけなんだからもっと労わって。


「あ、きたきた!」


 麻耶ねぇが横で大きく手を振る。

 すると、視線に先には小走りをしてこちらに向かってくる2人の人影があった。


「すみません、お待たせしてしまいましたか?」


「遅れてしまってごめんね」


 そう謝りながらやって来たのは、お淑やかな着物に身を包んだ西条院と、私服姿の一輝だった。


 ……西条院もまた可愛いな。

 これ、写真に収めて売りさばいたら儲かるんじゃないのか?


「全然待ってないから大丈夫!」


「そうだね〜!一輝くんも来てくれてありがと〜!」


 神楽坂はやって来た西条院の手を握り、麻耶ねぇは一輝を後ろからハグする。

 ……うんうん、仲がいいのはいい事だ。


 だから一輝よ、そんな疲れた顔をしないでくれ。

 麻耶ねぇなりの親睦の深め方なんだ。

 お前も分かっているだろう?


「みなさん、新年明けましておめでとうございます」


「僕からも、明けましておめでとう」


「うん!今年もよろしくね!」


「あぁ、よろしく」


「みんな今年もよろくね〜!」


 俺達はみんなが揃うと、改めてお互いに新年の挨拶をする。


 それにしても少し不思議な感じだな。


 麻耶ねぇと一輝はともかく、神楽坂と西条院とこうして初詣に来るなんて思わなかった。

 入学した当初は高嶺の花子さんで、絶対に関わることなんてないと思っていたからな。


 そう考えると、やっぱり先のことなんてどうなるか分からないものだ。


「じゃあ、みんなも揃ったし、早速お参りでもするか」


「「「はい!」」」


「――――望、その前に」


「なんだよ?早くしないと人増えちまうぞ?」


 俺達が参列に並ぼうとすると、後ろから不意に一輝から声をかけられる。


「ごめんけど、麻耶さん離して貰うの手伝ってくれない?」


 無理です。



 ♦♦♦


「……やっぱり人多いな」


 俺は一輝が疲れきって可哀想なので、何とか麻耶ねぇを一輝から引き剥がし、早速参列に並んだ。

 やっぱり新年早々だからか、並んでいる列もかなり人が多い。


 これ、午前中までにはお参りできるか?


「そ、そうだね……人が多いね」


 そして、何故か神楽坂は顔を赤くして俺の方をチラチラと見る。

 ……おい、どうしてそんなに恥ずかしがっているんだよ?


「そうですね、これだけ人が多いとはぐれてしまいそうです――――――だから」


 すると、西条院は俺の横に来て、おもむろに俺の手を両手で握った。


 ……へ?あなた何してるんですか?


「はぐれないようにしっかり手を握っていましょうか♪」


 西条院は楽しそうに、俺の手を上にあげて見せつけるように笑った。

 俺はその仕草に思わずドキッとしてしまう。


 ……ちょっと待って、どうして手を握るのさ?

 別にはぐれないようにするなら神楽坂と手を握っても良くない?

 俺、すっごい恥ずかしいんだけど?


「あ、ずるーい!私も望くんと手を繋ぐ!」


 その姿を見て羨ましく思ったのか、麻耶ねぇは反対側の手をギュッと握ってきた。


「へへっ……握っちゃった♪」


 ……どうしてそんなに可愛いの?

 俺キュン死しちゃうよ?


 さぁ、張り切っていきましょう!

 こんな望がキュン死する3秒前!

 はい!3、2、1――――――――じゃなくて!?


 どうして俺の手ばっか握ってくるの!?

 あと麻耶ねぇ、その上目遣いは反則です!ドキッとしちゃうじゃありませんか!


「うぅ……先越された…」


 そして後ろでは、神楽坂が頬を膨らませて悔しがっていた。

 そして、しょんぼりしながら俺の服を後ろでちょこんとつまむ。


 ……えぇ、君も手を繋ぎたいの?


 いや、めっちゃ嬉しんだけどね?

 だけど恥ずかしいし、周りの目が怖いんだよ……。


 ほら横を見てくださいよ。

 若い男性たちが目からビームを出しそうなくらい睨んできてますよ?


 俺、1人になったら殺されるんじゃないですかね?

 嫌ですよ……まだ俺は死にたくありません!


「ははは…これ、僕いない方が良かったかな」


 一輝よ、いてください。

 じゃないと俺の心臓がもちそうにありません。



 俺は切実に心の中でお願いした。



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