お風呂場にて私達は思う

(※アリス視点)



 私達は現在お風呂に入っています。

 というのも、私が何故か食器を洗おうとしたら蛇口が壊れてびしょ濡れになったんです。

 どうしてなのかな?本当、急に壊れちゃったんだよね?


 という訳で、今は3人で仲良くお風呂に入っています。

 時森くんの家のお風呂はかなり広くて、1人が体を洗っている間に2人で風呂に浸かれば十分なほど。


 ……ふぅ、やっぱりお風呂は気持ちいな。


 ――――それにしても。


「麻耶先輩、どうしたらそんなクビレができるんですか?」


 私は体を洗っている麻耶先輩の体を見て思わず聞いてしまう。


「うーん?別に何もしてないんだけどなぁ〜」


 ……羨ましい!


 女として麻耶先輩の体は素直に羨ましく感じてしまう。


 だって、凄いんだもん!

 出るところはしっかり出ているのに、締まるところはきっちり締まってるんだよ!?


 神様は本当に理不尽だと思う!

 どうして私も麻耶先輩みたいな体にしてくれなかったの!?


 私は自分の体に目を落とす。

 そこには人よりは少し大きい胸と、ほんの……ほんの少し!膨らんだお腹が見える。


「うぅ……羨ましい…」


 私の口から自然と愚痴が零れる。


 ――――それに、


「ど、どうしたんですかアリス?そんなにじっと見て……?」


 私は一緒にお風呂に浸かっているひぃちゃんを見る。


 全体的に細くて、綺麗な体。

 無駄な脂肪なんて一切なく、スラッとした体が………うぅ…。


「ひぃちゃんの裏切り者ぉ……」


「本当にどうしたんですかアリス?」


 どうせ私はぽっちゃりなんだ……。

 神様は私に試練を与えているんだ……。


「ひぃちゃんも羨ましいっ!」


「きゃっ!ど、どこ触っているんですか!?」


 私はひぃちゃんの細い体を触る。


「この体が!私に差を見せつけているんだよ!」


「だから何の話ですか!?」


 うぅ……やっぱり細いよ…。

 麻耶先輩は大きいし、ひぃちゃんは細いし……私だけ。


 男の子はやっぱり大きい人や細い人が好きなのだろうか?

 ……時森くんはどっちなんだろう?


 ひぃちゃんみたいな体をしている方がいいのか、麻耶先輩みたいな大きな胸をしている人がいいのか――――で、でもっ!時森くんはお風呂上がりの私を見ていつも鼻の下伸ばして見ているし、たまに……え、えっちな目で見ているから、だ、大丈夫なはず……。


 うん!まだ戦えるよ!諦めちゃダメ!

 前に進むって決めたんだもん!


「柊夜ちゃん、入っていいよ〜」


 私がそんなことを思っていると、麻耶先輩は洗い終わったようだ。


「分かりました」


 そして入れ替わるように麻耶先輩がお風呂に浸かる。


「………綺麗な体」


 私は思わず麻耶先輩に見蕩れてしまった。


 けど――――


「ん?どうしたのアリスちゃん?」


「い、いえ!なんでもないです!」


 私は思わず目を逸らす。


 それは綺麗な体もそうなんだけど、私は麻耶先輩のある部分が気になってしまったから。


 それは、綺麗な肌に刻まれた手首の深い傷跡。


 ―――――やっぱり、そういうことだよね。


 麻耶先輩からサラッと聞いたあの話。


 私はその事をどうしても思い出してしまうのであった。



 ♦♦♦



(※柊夜視点)


 私は麻耶先輩入れ替わるように体を洗います。


「……全く、何が羨ましいですか」


 私は体を洗いながらそう愚痴を零してしまいう。


 だってそうじゃないですか。


 私は自分の体に視線を落とす。

 そこには少しばかり膨らんだ私の胸が見えます。


 私の方が羨ましいですよ!


 湯船に浸かっている2人を見る。

 2人とも、私に比べればかなり大きいものを持っています。

 特に鷺森さんはとても凄い。


 はぁ……どうやったらあれだけ大きくなれるのでしょうか?


 私は自然にため息がこぼれます。


 神様は不公平だと思うんです。

 どうして鷺森さんやアリスみたいな胸を私にくれなかったのでしょうか?

 ……少しくらい私に分けてくれてもいいと思うんです。


 男の子は大きい胸が好きだと聞きます。

 鷺森さんはもちろんの事、アリスも着痩せするタイプで、こうして服を脱いでいると顕著に分かります。


 やっぱり、2人みたいな大きい人が好かれるのでしょうか?


 時森さんも――――――いえ、諦めるのは早いですね。

 たまに時森さんは私のおしりや太ももを……そ、その……い、いやらしい目で見ていますし……あながち胸だけではないと思うのです。


 だから私にも全然勝機はあると思います。

 この前、彼の膝の上に乗った時はドキドキしてくれましたし、あながち胸だけではないのかもしれません。


 私は自分の中でそう信じ、再び体を洗います。


 けど、私は少し気になっていることがあります。


「……さっきのあれは一体?」


 鷺森さんと入れ替わる時にチラッと見えたそれ。


 透き通った肌に目立つ、深い切り傷。

 それも手首に大きく刻まれていました。


 ……普通に考えれば手首に切り傷なんて考えれることは1つしかない。


 ―――――しかし、


「……何があったというのでしょうか?」


 私はその事に気になりつつも、本人には聞かないことにしました。

 きっと、それは触れては欲しくないことなのだと思うから。



『馬鹿野郎!このエデン前にしてお前は何もしないというのか!?』



 ……はぁ。

 外から時森さんの馬鹿な声が聞こえます。



 ……仕方ありませんね。

 その事を考える前に、時森さんが突撃してきてもいいようにしましょう。


「お二人とも、時森さんが覗きに来るそうですので、さっさと着替えましょう」



 私は時森さんの馬鹿な行動にため息をつきながらも、体を洗い終えお風呂から出るのでした。

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