さぁ、今こそ!エデンを覗きにいこう!

 皆さん、こんにちは。

 人生順風満帆に進んでいる時森望です。


 私は今非常に悩んでいます。

 それは思春期男子にとっては辛い悩み事なんです。


 え?何に悩んでるんだクソ野郎だって?

 はっはっはー、皆さん口が悪いですよ。


 まぁ、そんな読者の悪口は横に置いておいて、とりあえず話を進めましょう。


 俺が何に悩んでいるのかというと―――


『鷺森さん……やっぱり大きいですね…』


『スタイルもいいし……羨ましいです』


『アリスちゃんも意外と大きくないかな?』


 ……この状況である。


 美少女3人が同じ屋根の下に集まっていることにはもう慣れました。

 驚きはしたんだけどね。


 けど、これは流石にやばい……。

 思春期男子の理性をガンガン削っていく。


 俺はそんなことをリビングのソファーに座り考える。


『柊夜ちゃんも結構細くて羨ましいね〜』


『私だけ……細くない』


『ちょ、ちょっと!2人ともどこ触っているんですか!?』


 ………。


 風呂場でそんな声が聞こえてくる。


 そう、現在女子達は仲良く入浴中なのである。


 きっかけは―――――


『私食器洗うよ!』


『私も手伝います』


『望くんは座ってて〜』


 から始まり、


『きゃっ!』


『濡れてしまいましたね…』


『何で食器を洗うだけで蛇口が壊れるのかな……』


 という流れで、何故が蛇口が壊れたことにより、美少女達はびしょ濡れ。

 俺が直している間にお風呂に入ってもらっているのだが――――


「ちょー見たいっ!」


 蛇口を直し終わった俺は、そんな声を聞きながら悶々としているのだ。

 日々、神楽坂という美少女と一緒にいて悶々としないわけが無い。


 男の欲求は高まっていくばかり。

 俺はそれを今まで我慢してきた。


 ……けど、美少女3人がお風呂でキャッキャウフフしている状況に直面すると、どうしても理性の壁にヒビが入ってしまう。

 1度ヒビが入れば、後は崩壊していくだけ。


「―――行くか」


 俺はおもむろにソファーから立ち上がる。

 そして、リビングに置いてある一眼レフを片手にお風呂へと向かう。


「いや、待てよ?」


 このまま突入しても、西条院にボコボコにされた挙句、一眼レフも没収されるのではないか?


 ……少しシュミレーションしてみよう。


 〜パターン1〜


『背中流しに来たよ!(パシャ)』


『『キャ――!!』』


『何堂々と覗いているんですか?(ボキ、パキャ)』


 ……堂々と入ればバレるな。


 〜パターン2〜(窓から覗くバージョン)


『(パシャ)』


『何かシャッターの音が聞こえなかった?』


『あ、あそこで望くんが覗いているね』


『何しているんですか(ボキ、パキャ)』


 ……ダメだ、これも西条院に一眼レフを壊された挙句、俺の関節を外されてしまう。


「クソッ!俺はどうしてもお風呂を覗けないというのかッ!」


 俺はあまりの現実に膝から崩れ落ちる。


 俺は、このエデンの前に!ただ悶々と美少女達の声を聞くことしか出来ないのか!?


 ―――――いや、考えろ!

 思考という海の中を潜るんだ。

 深く、深く潜ることにより、何か解決策が見つかるかもしれない。

 そしてたどり着くんだ!エデンを見るためにはどうすればいいのかを!


 ……思いついた。


 俺一人だから西条院に捕まってしまうんだ。


 麻耶ねぇと神楽坂はきっと俺を死に追いやることはしないだろう。

 殺るのは西条院だけ。


 だったら、俺以外にもう1人入れば西条院から逃げることはできるのではないか?


 思いついたが吉日。

 早速俺は携帯を取り出し、


「もしもし、ちょっと俺の家に今すぐ来て欲しいんだけど―――――」



 ♦♦♦



「――――というわけなんだ」


「僕はそんなことで呼び出されたの……」


 一輝は俺の話を聞いて呆れて肩を落とす。

 そう、1人ではダメだということに気づいた俺は、一輝を召喚。


 エデンを見るために協力してもらうことにした。


「馬鹿野郎!このエデン前にしてお前は何もしないというのか!?」


「何もしないに決まっているじゃないか……」


 こいつは本当に男だというのか!?

 このエデン前にして、これを覗きにいかない男がどこにいる!?


 読者の皆さんも俺と同じ行動をするに違いない。

 俺と仲良く手を取り合い、男の夢が詰まったお風呂に一緒に突入してくれるというのに……。


「全く……これだから童貞は…」


「童貞だからこそ、こういう願望に走るんだと思うよ?」


 ほんと、ああ言えばこう言う親友である。


「クソッ!お前はなんて使えないんだ!」


「ここまで理不尽に怒られたのは久しぶりだね…」


 そう言って一輝は苦笑いをする。

 いいんだよイケメンの苦笑いなんて!

 俺はイケメンの顔じゃなくて美少女の裸が見たいの!


「もういい!こうなったら俺一人でも、突撃してカメラに収めてやるぅ!」


 俺は頼りにならない一輝を放置して、一眼レフ片手にお風呂場へと向かう。

 大丈夫!俺ならきっと出来る!


 西条院に捕まることなく、美少女達の裸を脳内とフィルムに焼き付けることが!


 いざ拝まん!楽園の美少女達よ!


 俺はそんな決意を胸に抱き、お風呂場のドアを思いっきり開ける。



 するとそこには―――――


「時森くん……」


「ははっ!望くんは分かりやすいね〜」



 ――――部屋着に着替えた美少女達がいた。


「そ、そんな……」


 俺は膝から崩れ落ちる。

 ……もうっ、もう着替えているなんてッ!?


「言っておくけど、望くんの会話は全部聞こえていたからね?」


 服を着た麻耶ねぇが優しくそう投げかける。


 しまった!?聞こえていたなんて!?

 ……望、一生の不覚ッ!


「そうだったのか……。フッ、この勝負俺の負けのようだ」


 俺は立ち上がり、風呂場から潔く立ち去る。


 今回は君達に勝利を譲ろう。

 だが、次は俺が勝って君達の裸姿を拝ませてもらうぞ。


「ちょっと待ってください時森さん。何、さりげなく逃げようとしているのですか?」


 そう言って、西条院は俺の肩を強く掴む。


「……ですよねー」


 あぁ――――殺されるなぁ。





 結局、俺は西条院に全関節を外された挙句、2時間ほど説教を受けました。


 ……ぐすん。


 次こそは絶対に覗いてやるんだからねっ!

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