〜エピローグ〜変わった日常
神楽坂が昔の友達とよりを戻してから数日がたった。
あの後、神楽坂のお友達は帰っていき、俺らも帰ろうとしたのだが、西条院はそれを許してくれなかった。
……まぁ、自業自得――――って訳では無いが、黙っていなくなったんだ。
神楽坂はこっぴどく西条院に怒られ、また別の意味で涙ぐんでいたが、最終的には西条院も神楽坂の事を許して、仲のいい2人に戻ったのこと。
そうでないと、俺も困るからな。
「時森くん!荷解き終わったよ!」
現在、俺達は平和な日常を過ごしていた。
いつもの寂しい空間とは違い、今では明るい神楽坂が加わり、騒がしい日常を過ごしている。
……まぁ、はじめは色々とハプニングがあったが、また追々話させてもらおう。
「おう、お疲れ。早速飯にするか」
「うん!ありがとう!」
俺は神楽坂が荷解きをしている間に作っておいたオムライスをテーブルに並べる。
「わぁ〜!美味しそうだね!」
神楽坂はオムライスを見て目を輝かせる。
……やっぱり、誰かに料理を食べてもらうのはいいな。
今まではちょくちょく麻耶ねぇが食べに来てたくらいで、基本は1人だけだった。
美味しそうって言って貰えるだけでも嬉しいものだ。
「こら、ちゃんと手は洗ったのか?」
「洗ったよ!」
しかし、神楽坂とすごし始めてからというもの、何故か俺の発言がお母さんっぽくなってきてしまっている。
……どうしてだろうか?
神楽坂と過ごしていると、守ってあげなきゃという感情が込み上げてくる。
不思議だね?
「じゃあ、早速食べるか」
「はーい!」
そう言って、俺達は椅子に座る。
――――座るのだが……
「おい、どうしてお前は俺の隣に座る?正面にちゃんと用意しているだろう?」
「いいじゃん別に!私が時森くんの隣に座りたいだけだから!」
何故か神楽坂は俺の隣に座ってきたのだ。
……折角、俺の正面に並べたのに、隣に座りやがって――――ほんと、今まではこんなにグイグイくる子じゃなかったのに……変わってしまったな。
……まぁ、いいや。
早く食べないと冷めちゃうし、可愛いから許してやろう。
「はぁ……とにかく、冷めないうちに食べるか」
「うん!いただきまーす!」
俺達はそう言ってご飯を食べることにした。
時折、「おいしーい!」と隣で聞こえてくるので、妙に嬉しく感じてしまう。
……やっぱり、1人で食べるより美味しいな。
「そういや、ちゃんと転校の手続きできたのか?」
「うん。何かお父さんがやってくれたみたいで、新学期も問題なく登校できるらしいよ!」
「なら良かった」
俺はその言葉を聞いて安心する。
どうやら、幸雄さんはちゃんとやってくれたようだ。
正直、昨日俺の家に来てすぐに帰ってしまったから心配で仕方なかったんだ。
そういや「いいか、娘とは学校を卒業してからだぞ!」とか言っていたけどなんだったのだろう?
「あ、そうだ時森くん!お母さんが「新婚旅行はロシアに来なさい」って言ってたよ!」
「ふぁっ!?」
え、何!?新婚旅行って何の話!?
俺と神楽坂ってそういう関係じゃないんだけど!?
セリアさんは一体娘に何の話をしたの!?
「どうしてそんな話になったんだ!?俺と神楽坂の関係誤解してないか!?」
「けど、正直あそこで「絶対に幸せにします」って時森くんが言ったらそういう関係って思われるのが普通だと思うんだけど……」
た、確かに……。
あの時は勢いで言ってしまったが、よくよく思い返してみればあれってプロポーズじゃないのか?
いやいや、そんなことは無いはずだ…。
俺は幸雄さん達に言った言葉を思い出す。
『確かに、今の俺にはあなた達に信用してもらえる根拠を示せない―――――だから、俺はこの先の行動で示していきます。あなた達の娘さんが幸せになれるように、ずっと一緒に支えます。前に進めるように、俺が背中を押し続けます。間違いが起きたら、私は首をつってお詫びします。……俺は、それくらい本気です』
うん、どう考えてもプロポーズだよね。
「ちょっと今から幸雄さん達に電話してくる」
そう言って、俺は椅子から立ち上がる。
すると、神楽坂が俺の手を引っ張って止めてきた。
「大丈夫だよ、ちゃんと私が否定しておいたから」
「そ、そうか…」
俺は少し安心する。
良かった……変に誤解されたわけじゃないのか…。
―――――けど、
俺はチラリと神楽坂の方を見る。
……俺って告白されたんだよな。
――――あれから、俺は答えを出せていない。
けど、どうしてもこの気持ちだけは伝えておきたい。
最近は色々ありすぎて言えなかったが、そろそろ言わなくてはいけないだろう。
「なぁ、神楽坂……あの日してくれた告白のことなんだけど」
俺は少しだけ自分の気持ちを整理して神楽坂に向けて口を開く。
「うん」
「……やっぱり、俺はお前を友達だと思っている。今まで一緒に楽しく過ごしてきたが、あまり異性として見ていなかったんだ……その、神楽坂は可愛いし、魅力的な女の子だし、好きだと思っているけど――――」
「時森くん」
俺が話をしていると、神楽坂は話を遮って、俺の顔に手を当てた。
そして、可愛いらしい顔を俺の方に向けて―――――
「ーーーーーッ!?」
俺の頬に軽いキスをした。
柔らかい感触が頬に伝わる
え?待って?……なんで俺キスされたの?
俺は唐突の出来事に、頭が真っ白になってしまった。
「大丈夫。時森くんが私の事を友達だと思っているのは知ってる。そんな私のために、わざわざロシアに来てくれたのも知ってる」
神楽坂は顔を赤くしながら、俺の額に自分の額を合わせる。
「でも、きっと私の事を好きにさせてみせる。私の魅力をいっぱいに伝える。ひぃちゃんや麻耶先輩にも負けないくらい好きになってもらう。他の人なんて目に入らないくらいメロメロにしてみせる。だから――――」
覚悟しておいてね。
神楽坂は俺の耳元でそっと呟くと、自分の椅子へと戻っていった。
……あぁ、ダメだ。顔が熱いぞ。
神楽坂は魅力的な女の子だ。
正直、今でも危ないというのに、アピールされてしまったらどうなるか分からない。
しかも、こういうことをされたら余計にでも意識してしまう。
『彼女を作る』
『彼氏を作る』
俺達は各々目的を持っている。
もしかしたら、その目標の相手に俺達がなってしまうのかもしれない。
「……どうしたもんかね」
俺は神楽坂に聞こえないくらいの声で呟いた。
こうして、またひとつ俺達の物語の結末に1歩近づいた。
物語の登場人物はそれぞれ想いを変えて、結末へと進んでいく。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
※作者からのコメント
クリスマス編もこれで終了です!
ここまで読んでくださった皆さん、ありがとうございます!
ここにきて、ギャグも少なく真面目な話ばかりでしたが、何とか書けました。
………ここで、作者は悩んでいます。
後1章にするのかちゃんと2章書くのか……。
まぁ、それは追追考えていきましょう!
とりあえず、皆さんお付き合いしていただきありがとうございました!
引き続き宜しくお願いします!
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