〜閑話〜そうだ、合コンに行こう!(2)

 合コン。


 それは男女がワイワイガヤガヤと盛り上がる場。

 そこには様々な出会いがあり、そこで運命の人と巡り会うことが出来る素晴らしい催しだ。


 俺の知り合いにも合コンによって彼女ができたという人がいることから、俺にも運命の人と出会い彼女が作れるはず。

 —————そう思わずにいられなかった。


 合コンではカラオケやボーリングなど、開催する場所に決まりはなく、皆が盛り上がるような場所で開催するのが一般的である。


 それは今回の合コンでも変わらない。


 今回の合コンは駅前にあるカラオケ店。

 俺は期待に胸を膨らませていた。


「よし、みんな揃ったな。んじゃあ、早速始めようか」


「「「「「いえ———い!!!」」」」」


 そんな掛け声がカラオケルーム響く。

 俺もテンションアゲアゲだ。


 今回集まったのは10人。

 男子5人と女子5人というバランスのいい男女比だ。


「とりあえず知らない奴もいるからな、自己紹介から始めようか。俺は2年の宮下だ」


 そう言いながらサッカー部のガタイのいい先輩が自己紹介をする。


 ……あぁ、宮下っていう名前なんだ。初めて知ったよ……知らなくてごめんなさい。


「俺はサッカー部所属、山中っす!」


「同じく宮島だ!」


 それに続いて、ほかの男子達も自己紹介をしていく。

 サッカー部多いのは、サッカー部が主催している合コンだから仕方ないだろう。

 ……俺、若干場違いじゃね?


「サッカー部の1年、佐藤一輝です」


「「「きゃ————!!!」」」


 すると、先程の自己紹介では聞こえなかった女子達の黄色い歓声が聞こえた。


 ————流石だ一輝。そのイケメンと人気は妬ましいにも程がある。


「……はぁ、どうして僕が参加しないといけないんだろう」


 そう、なんと意外なことに一輝この合コンに参加しているのだ。


 こういうイベントには参加しないやつだと思っていたのだがな……多分、女子を集めるために宮下先輩が呼んだのだろう。


 ありがとう!女子を参加させるために来てくれて!


「俺は時森望です!よろしくお願いします!」


 俺もみんなに習って自己紹介をする。

 しかし、黄色い歓声は起こらなかった。


 ………一輝よ、後でお前はイケメンという罪で断罪してやる。


「あ、君この写真の子だよね?」


 そう言って一人の茶髪の女子が俺に向かってスマホを見せてくる。

 そこにはアップで撮られていた俺の女装写真が—————


「お願いします。それを消していただけないでしょうか」


「見事な土下座だな」


「まるで日常的に行っているかのような動きだね」


 俺は思いっきり土下座をする。


 消してくださいお願いします。祭りでテンションが高ぶっていたからこそできていたことなんです。

 今となれば思いっきり黒歴史なんです。


「え〜、どうしよっかな〜?あ、2年の私桜っていうの!サッカー部のマネージャーしてます!よろしくね〜」


 宜しく出来ないです。


「でも、私以外にも持っている人いっぱいいるよ」


 そう言いながら桜先輩は隣にいた女子を指さす。

 ………まさか。


「サッカー部のマネージャーやってます、1年の山吹沙織です!このメイド姿には感激しました!」


 元気よく俺に向かってくる同学年の少女。

 感激しないで欲しいです。感激するのは男の役目であって女子が感激するのはおかしいよね?


「わかるわかる〜!あ、私沙織の友達の三森優子っていうのよろしく」


 ついでみたいに自己紹介しないで欲しい。

 後、その写真消さないと宜しく出来ないです。


「その写真持ってないです!もし良かったらこの後いただけませんか!」


 そう言いながら、スマホの画面を覗く銀髪の美少女。

 おいこら、さりげなく欲しいって言うんじゃないよ。


「嬢ちゃん達も自己紹介してくれないか?」


「あ、はいっ!1年の神楽坂アリスです!」


 スマホを覗き込んでいた神楽坂は元気よく挨拶する。

 うんうん、元気があってよろしい。だから神楽坂よ、いい加減俺の女装写真から目を離しなさい。恥ずかしいでしょうが。


「じゃあ私もですね。西条院柊夜です、よろしくお願いいたしますね」


 続いて俺の隣に座っていた金髪美少女が自己紹介をする。

 神楽坂が来るのは分かるよ。前に約束していたからな。

 けどさ——————


「なんでお前まで来てんだよ?」


「あら?私が来てはいけませんか?」


「お前好きな人いるだろ?それなのにこんなとこ来てもいいのかよ」


「ふふっ、だから来るんですよ。少しでも牽制しておかないといけませんからね」


 西条院は口元に手を当てて上品に笑う。

 ……くそっ、思わずドキッとしてしまったじゃないか。


 やっぱり俺のことが好きなのだろうか?

 ……俺が他の女の子と仲良くしないようにこの合コンに来た……のか?


 —————いや、考えすぎか。


 俺は考えるのをやめ、先輩たちの方を向いた。

 すると、そこには男達(サッカー部の2人)が目をうるうるさせている姿が見えた。


「ここに学園三大美女が来てくれるなんて……くぅ!」


「俺、生きててよかったっす……」


「先輩方、これで鼻噛んでください」


 マジで感動しているようだ。

 気持ちは分からんでもないが………泣くほどか?


「みんな自己紹介も終わったところだし、早速歌うか」


「そうだね!あ、そうだ時森くん。カラオケで90点以上出せたらこの写真消してあげるよ」


 そう言いながら、桜先輩はスマホをチラチラ見せながら俺にマイクを渡してくる。


 ……フッ。


「その言葉、二言はないですよね?」


「ないない!」


 ならばと、先輩からマイクを受け取る。

 そして、俺は比較的聞き慣れているバラードの曲を入れる。


 これならば結構人気がある曲なのでみんなも知っているだろう。


 仕方ない、写真のためではあるが、女性陣にこの美声を聞かせてあげようじゃないか!



♦♦♦



「どうですか桜先輩?」


 俺は4分弱の曲を歌い終えた。

 しかし、カラオケルームは盛り上がるどころかシーンとしていた。


 おかしいな?バラードで盛り上がらないのは分かるが、歌っている途中誰も喋らなっかたぞ?


 俺は画面に出ている採点結果を見る。

 うーむ、結果を見る限り下手くそという訳ではないはずなんだが……。


「……いや、えーっと…」


 先輩は何故か口篭る。

 え、待って、そんなにおかしかったかな!?


「ねぇ、望………上手すぎない?」


 一輝は呆然としながらも俺を褒めてくる。

 よせやい、男に言われても嬉しくないぞこのやろうっ!


「いえ、本当に凄いですね……」


「私も、98点って初めて見たよ……」


 西条院も神楽坂も、俺の歌を聴いて何故か呆然としていた。

 ふむ、女子から褒められるとは、練習した甲斐があったというものだな。


「先輩、という訳で俺の写真消してください」


「あ、……うん。約束だしね」


 そう言って先輩はスマホをいじり、写真をちゃんと消してくれた。

 ふぅ……これで俺の女装写真が1枚消えたな。


「時森くん上手すぎない?練習とかしたの?」


 先程まで呆然としていた山吹さんは、どうやら現実に戻ったようだ。


「あぁ、歌が上手い人は女子からモテるって聞いてな、めちゃくちゃ練習した」


「確かに……これだけ上手かったらモテそうだよね……」


 よせやい、今度は本気で照れるだろ。


「何故時森さんはこうもハイスペックなのですか……」


「うぅ……ライバルが増えそうで怖いよ……」


 神楽坂と西条院は隣で頭を抱えて呟いていたが、どうしたのだろうか?


 もしかして、歌唱力で俺と並ぶライバル存在するということなのか—————だったら今度勝負してみたいな。


「ハハハ……二人も苦労しそうだね」



 という訳で、微妙な空気になりながらも、俺たちの合コンは始まっていったのであった。

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