〜閑話〜俺と美少女とババ抜きと!(3)
「じゃあ今度は俺が配るわ」
俺はトランプを手元に集めシャッフルし、みんなに均等に配る。
ここの段階でイカサマできる技術は生憎持ち合わせていない。
なので、イカサマもなしだ。
とにかく、今回は合コンのことは考えず動画を消してもらうことだけを考えよう。
というわけで目指せ1位、打倒西条院!
「私は4枚ですね」
「僕は6枚かな」
「5枚残ったよ!」
みんなペアのカードを場に捨てて、残ったカードを各々見る。
よし、さっきみたいに1枚とかはなく均等に残ったようだ。
俺は西条院と同じ4枚残りだが手元にジョーカーがある。
…早く処理しなくては。
「じゃあさっき負けた俺からだな」
俺は神楽坂の方を向きカードをとる。
ぶっちゃけ、俺にジョーカーがある以上何を取ってもいいのだがそこは悟られないよう慎重に選んでいるフリをする。
悟られないようにじーっとカードと神楽坂を見るのだが……
「……ッ!」
何故、俺から目を背ける?
お前にジョーカーはないだろうに。しかも何で顔が赤いんだ?もしかして熱でもあるのだろうか?
「チッ、外したか」
神楽坂からカードを取るも、手元のカードと揃わなかった。
しかし、まだ序盤だ。焦る必要もない!
「ほら、西条院」
俺はジョーカーを右端に置いたトランプを西条院に向ける。
「そうですね。じゃあ私がひきますね」
そう言って西条院は俺の方を向いてカードを凝視する。
そ、そんなに見つめないでくれよ…照れるー。
「ちなみに、時森さん。あなたの手元にジョーカーはありますか?」
フッ、案の定カマをかけてきたな?
だが、無駄な事だぜ!なんていったって俺は昔『ポーカーフェイスのときもっちゃん』と呼ばれたほどポーカーフェイスには自信がある。
俺は西条院に極めてクールに冷静に悟られないように答える。
「も、持っているわけ、にゃいだろ?」
やばい!
西条院という絶世の美少女に見つめられたことによってカミカミになってしまった!
だが、あると分かっていても5分の4。つまり20%の確率で引いてしまうことになる。
さぁ、右端にあるジョーカーを引け西条院!
「なるほど、右端にジョーカーがあるのですね」
何故に分かるし!?
視線か!それとも顔の表情でバレてしまったのか!?
俺の完璧なポーカーフェイスでも西条院のエスパー並の観察力には勝てないというのか!?
西条院は右端のカードをさけ、カードをひき揃ったのか場にペアを出していく。
くっ!これでやつは3枚か…。
「ふふっ、時森さんは分かりやすいんですよ」
西条院は俺をからかうように上品に笑う。
くそっ!バカにしやがって!
一輝も神楽坂もそれぞれカードを引いていき、見事にカードが揃っていく。
そして俺の番。
俺は神楽坂のカードを慎重に引く。
カードが少なくなった以上、俺のカードが揃う可能性は高いのだが、俺は再び悟られないように神楽坂を凝視する。
「そ、そんなに見つめないでよぅ…」
そして何故か神楽坂は顔を真っ赤にして俯いてしまった。
やっぱり熱でもあるのではないか?
————いや、まさか!?
俺に見られるのに生理的嫌悪感を感じてしまって顔を逸らしているのか!?
「や、やるな神楽坂…俺の心を傷つけて動揺を誘うなんて…」
「え、何の話!?」
なんて精神攻撃なんだ…。思わず俺も動揺してしまうところだったぜ。
神楽坂…なんて恐ろしい子なの!?
「望はまた違うこと考えているよね」
「うぅ…佐藤くん、何で時森くんはこうなの?」
俺は傷ついた心を庇いつつ、神楽坂からカードを引く。
そしてペアが揃ったので場に捨てて残り5枚。
「さぁ、西条院。さっきのようにはいかないぜ!」
「楽しみにしてますよ」
さっきはおそらく表情か視線でジョーカーの位置を把握したのだろう。
しかし、今度はそうはいかない!
俺は、西条院の顔から視線を少し下に逸らし、まだ開拓されていない胸部に視線を向ける。
これなら視線を合わすこともないし、この水平線を眺めていれば心も落ち着いて俺の考えていることも読めなくなって俺の関節があらぬ方向に曲がって感覚が―――――
「痛い痛い、西条院さん! その間接は反対方向には向かなぁぁぁぁぁ!」
「あなたは一体どこを向いて何を考えているんですか?」
質問するなら何故関節をキメるのですか西条院さん?
「…全く、あなたはもう少しデリカシーを持ってください―――――あ、また揃いました」
溜息をつきつつも、ちゃっかりカードを揃えてくる西条院。
マジで西条院に勝てる気がしない…。
♦♦♦
そして、なんだかんだで決着はつき、俺達はトランプを片付ける。
結果は、ま、まぁ、読者の皆さんも分かっていると思うけど、もちろん―――――
「最終的に西条院さんが1位で望が最下位だね」
……ドベでした。
だっておかしいんだもん!
あれから結局1回もババがずーっと手元にあるんだよ!西条院が1回もババを引きやがらないんだよ!
そりゃ負けるよね。せっかくババに小細工をしたのに全く意味をなさなかったよ…。
「さて、何をお願いしましょうか?」
「お願いします。せめてお願いであってください。脅迫は勘弁してつかぁさい…」
「脅迫しませんよ…」
俺の経験上、説得力皆無である。
「それで、ひぃちゃんは何にするの?」
「そうですね………あ、お願いを決めました」
俺は反射的に警戒態勢をとる。
ついにきたか!西条院のお願い!
お願いします。無理がない程度に優しいお願いでありますように!
「今度私ともデートして下さい。アリスだけデートするなんてずるいですし」
「ほぇっ!?」
「ちょ、ちょっと何言ってるのひぃちゃん!?」
俺は西条院のお願いに思わず変な声が出てしまう。
神楽坂も西条院の発言に慌てている。
「あら?いいじゃないですか、アリスと同じお願いしたのですから。もちろん、私は今後彼氏が出来た時の練習のためですが」
「う、うぅ……」
西条院が神楽坂に含みのある笑みを向け、それに対して神楽坂は悔しそうに言葉につまる。
まぁ、俺としては美少女達とデートというのは男としても俺個人としても嬉しい限りではあるんだが…。
「…望、デートする際には男子達にはくれぐれも注意してね」
そうなのだ、こいつらと出かけているところを見られたら俺の命が天に召される可能性がある。
だからデートする時は慎重に行動しなければならないのだが―――――
「今まで無事だったことないもんなぁ…」
俺はデートのことを考えると思わずため息が出る。
果たして俺は無事にデートすることができるのだろうか?
こうして、放課後のババ抜き大会は神楽坂と西条院の勝利で幕を閉じたのであった。
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