〜閑話〜俺と美少女とババ抜きと!(2)
「じゃあ僕が配るね」
そう言って、一輝は俺が持ってきたトランプをシャッフルし、交互にみんなに配っていく。
……ついに始まったッ!
普通にやれば1位になる確率は25%。だがしかし!俺がなんの策もないままババ抜きを提案したと思うか?————否!
俺は予めババのカードに後ろから傷をつけてある。
これでババの位置が分かり、どんなことが起ころうと俺がババを引くことはなく、負けることは無いだろう。
後は1位であがるのみ!
後ろで俺の行く末を見守らんばかりに凶器を構えている男共から命を守るため、俺は絶対に勝つんだ!
一輝はトランプを配り終え、俺達はトランプを手元に集めてペアをどんどん出していく。
そして最終的に残った枚数は
一輝→1枚
西条院→1枚
神楽坂1枚
俺→2枚
「っておかしいだろこれ!?」
「何かおかしいことでも?」
しらを切らんばかりに西条院が首を傾げて聞いてくる。
おかしいことばかりだよ。
「なんでお前らもう1枚しか残っていないんだ!?」
「偶然でしょ」
「偶然ではないですか?」
「偶然でこれならカジノは大騒ぎだよ」
「何か不正を働いた証拠はあるのですか?」
…くっ! とりあえず一輝がシャッフルをしている最中もずっと見ていたし、不正した可能性は高いがそれらしい行動もしていなかった。
…くそ、枚数は圧倒的不利だがやるしかない!
「ま、まぁ、こういう偶然もあるよね!」
…神楽坂の挙動が不自然だがやるしかないだろう。
「じゃあ私からだね」
一応時計回りでカードを引いていく。
順番としては神楽坂→俺→西条院→一輝ということになる。
1枚しかない以上西条院のあがりは確定してしまった。
まさかやる前から処刑が決まるなんて思わなかったさ。
ほら見ろ、後ろの連中が「キャッキャ」なんて声に出しながら包丁を研いでいるぞ。
…こうなれば、せめて一輝も道ずれに「あがったよ!」「私もですね」「僕もあがりかな」するしか………しくしく…うぅ…。
「と、時森さん!?どうして急に号泣してるんですか!?」
「あぁ…安心して西条院さん。望は死刑執行が確定しただけだから」
「安心できないのですが!?」
お父さん、お母さん、ごめんね。
親より先に死ぬ親不孝者な俺を許しておくれよ…。
「とりあえず1番にあがった神楽坂さん、何か望にお願いはあるかい?」
「え、えーっと…」
神楽坂が俺を見て戸惑っているが、気にするな。
正直、カードが配られた時点で俺は諦めていたからな。
この後のことを考えて、今のうちに美少女の顔を見て癒されておきたい。
「さぁ、なんでも言うがいい!女子会だろうが合コンだろうがなんだってこいってんだ!」
「それはあなたの願望ですよね?」
「まだ諦めきれないんだね…」
西条院と一輝は俺を呆れた目で見て、神楽坂は苦笑しながらこちらを見ている。
やめて!そんなめで僕を見ないで!
「じゃ、じゃあ、時森くん…」
「おう」
神楽坂は一体どんなお願いをするのだろうか?
出来れば優しいお願いだといいな。
…いや、後ろの連中を刺激しないお願いであって欲しい。じゃないと俺の命が後でじゃなく今すぐに尽きてしまう。
―――――まぁ、でも流石にそんなことは言わないと思うけど…。
そして神楽坂は深呼吸をひとつ挟み、お願いを口にする。
「こ、今度、私とで、デートしてほしいっ!」
「さらばッ!」
「「「execute the death penalty!!!」」」
神楽坂がそう口にした瞬間、俺は勢いよく窓から飛び降りる。
それに追従して、後ろで構えていた連中も一斉に飛び下りる。
「合コンはどうした時森ぃ!」
「デートとはいい度胸じゃねぇかゴラァ!」
「殺っちゃえ殺っちゃえ〜♪じっくりじわじわ殺っちゃうよ〜」
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃッ! 殺されるぅぅぅぅぅ!!!」
俺は後ろから迫り来る悪鬼から必死に逃げるためグラウンドを駆けていく。
その光景を見ていた一輝達は
「さて、望が帰ってくるまで大富豪でもしないかい?」
「あなたはこの光景を見ても落ち着いているのですね…」
「もう慣れっこだしね〜」
大富豪するべくトランプを集めシャッフルしていた。
♦♦♦
「神楽坂くん。君はもうちょっと自分の発言で人を殺せることを知って欲しい」
「…ごめんなさい」
全身にあざと擦り傷を負って帰ってきた俺は神楽坂に説教をしていた。
結局、俺は合コンを組むことは出来なかったため追加で奴らに粛清されたが、何とか一命は取り留めた。……本当に奇跡だった。
「さて、時森さんも帰って来たことですし、もう一度やりませんか?私としてもあれで決着だと面白くありませんでしたし」
「僕も別にいいよ。望のおかげで命の危機は去ったわけだし、清々しい気持ちでできそうだからね」
「俺に感謝してるのであれば、もうちょっといたわってくれない?」
一輝は、俺が嫉妬に狂った連中の対象になったおかげで標的にされず、一命を取りとめてしまった。
今は後ろには誰もおらず、教室には俺たちしかいない。
………今度やつが他高校の女子とイチャイチャしていた情報をクラスメイトに流さなければ。
「にしても、神楽坂が俺にデートして欲しいなんてな。ちょっと意外だったわ」
「い、嫌だった?」
おずおずと、神楽坂は俺の顔色を伺うように聞いてくる。
「別に、いつか彼氏ができた時のための練習がしたいんだろ?分かってるよ」
「……分かってないじゃん」
「ん?何か言ったか?」
そう聞き返すも、今度は頬を膨らませてそっぽを向いてしまった。
どうしたんだ?俺が言ったことが間違いだったわけじゃあるまいし、何が気に入らなかったんだろうか?
「…あれって分かってやっているのですか?」
「違うんじゃないかな?望は中学からこんな感じだったし」
うーむ、やっぱり女心はよく分からないな。
やっぱり女心が分からないから俺はモテないんだろうか?
…今度麻耶ねぇに聞いてみるか。
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