美少女と二人で帰宅する……明日、刺されないよね?

 サッカー部と勝負をして、見事勝ち星を上げた後、俺達は生徒会室へと戻った。


 ちなみに勝負が終わった後、彼女達のとこに向かうと、笑顔で雑談に花を開かせていた。


 傍から見ると美男女達が談笑しているその姿は、少女漫画の如くキラキラしていた。

 その時、思わずサングラスが欲しくなってしまいました。


「それで、一輝と話してみてどうだった?」


「うん、やっぱりいい人だったね!」


「そうですね、私達といても変な目で見ませんし、ちゃんと私達個人として話してくれていましたね」


 それは僥倖である。

 こいつらの一輝の印象がいいと判断してくれた以上、後はこいつらが本心で話せるよう仲良くなって、くっついてしまえばオールオッケー。

 俺も一人いなくなって肩の荷物も減るってもんさ!


 そして、思わず合コンも組めて更に僥倖!

 序盤から上手く行き過ぎて高笑いしてしまいそうだ。


「ふはははははハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!」


「えっ! 急に笑いだしてどうしたの!?」


 いかんいかん、普通に高笑いしてしまった。

 その所為で、神楽坂が驚いてしまった。ごめんね?


「どうせ、合コンが組めて喜んでいるのでしょう」


 西条院は呆れた様子でこちらを見ている。

 残念だったな、今回のエスパーは五十点、半分正解だ。


「まぁ、とにかくこれからは一輝とも積極的に話して、仲良くなることから始めよう!」


「そうだね! この調子で頑張っていこー!」


 神楽坂は小さい手を上に掲げて気合を入れた。


「そうですね、まだ彼とは彼氏云々はともかく、お友達にはなりたいですし。まだ、時森さんには色々利用価値があるので引き続き頑張っていきましょう」


「え? 俺って利用価値だけの男だったの? 利用価値なくなったらお前頑張らないの?」


「ふふっ、冗談ですよ。ちゃんと頑張るに決まっているに決まっているでしょう? 私をなんだと思ってるのですか?」


「ん? 水平線の胸部、腹黒い性格、他人を黙らせる暴力を兼ね備えたとても麗しいお嬢様だと思っているが?」


「ぶち殺すぞワレ?」


「だから口調がおかし――――ぁぁぁぁっ!? 関節はそっちには曲がらなァァァい!!!」



 さて、こんなやり取りが生徒会室ではありましたが、こうして彼女達は彼氏作りに一歩近づいたのでした。



 ……帰って病院行かなきゃ。



 ♦♦♦



 その後、俺たちはそのまま解散し、西条院は迎えが来ているらしく校門で別れた。


 一方神楽坂はというと────


「いやぁ〜、まさか時森くんも同じ方向だったなんてね!」


 俺と一緒に帰宅をしていた。

 なんでも俺の家の近くに家があるらしい。

 あなたがご近所さんなんて、半年経って初めて知りましたよ。


「そうですね……。なぁ、一緒に帰らなきゃいけないか? 俺、どっか寄り道して帰るからさ……」


「ふぇっ、なんで? 一緒に帰ろうよ! どうせ一緒なんだし!」


 ……それはそうなんだが。

 いや、ほんとにね。俺としても学園屈指の美少女一緒に帰るのは、嬉しいよ? 男だもん。


 けどね、それ以上にさ――――


「……おい、あいつ神楽坂さんと一緒に帰ってやがるぞ」


「羨ましい……殺すか」


「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」


 周りの目が怖いんですよね!

 ほんとにもう、殺気がブンブン飛び回ってるのよ!


 神楽坂はほんとに美少女だ。整った顔や誰にでも明るい性格は勿論なんだが、綺麗な銀髪が目立ちまくっていて、誰もが注目してしまう。

 当の本人は気づいていないみたいだけど。


 ────俺、明日刺されないかな?


「……でも、改めてありがとうね」


 俺が周りの殺気にビクビクしていると、唐突に彼女はお礼を言ってくる。


「どうしたんだ急に?」


「うん、私達のお願いを聞いてくれたお礼。改めて言っておこうと思って」


「神楽坂よ、あれはお願いではなく脅迫と言うんだ。一回国語辞典でも買って調べてみてくれ」


「あははっ!」


 何が面白いというのか、俺は一つも面白くなかったぞ?

 まだ、昔の漫才芸人を見ていた方が面白い。


「けど、文句を言いつつもちゃんと協力してくれてるんだもん、ちゃんとお礼言わなきゃ!」


 一歩先に進んでいた神楽坂は振り返り、溢れんばかりの笑顔を向けてみた。


 いやぁー、めちゃくちゃ可愛い笑顔のはずなのにドキッとしないのは、多分脅迫のお陰かな?


「はいはい、どーも」


 俺はとりあえずお礼を受け取る。

 でも、悲しいことに全く嬉しくないんだよね。


「そういえば、まだ私達が彼氏が欲しい理由を言ってなかったよね」


「え? 確か西条院がまだ言えないとか言ってなかったか?」


 確か、「まだあなたは信用出来ませんから」みたいなセリフを言っていたような気がする。


 ……あの時の西条院を思い出すだけでムカつくな。

 明日絶対にめちゃくちゃからかってやる。

 そう、俺は神楽坂に悟られないように心の中で決意した。


「ん? あー、あれは単なるひぃちゃんの照れ隠し! あまり話したことない人に言うのが恥ずかしかっただけだよ〜」


「……ん、そうだったのか?」


 これはいい事を聞いたぞ。

 明日、西条院をこのネタでからかってやろう。


「私達が彼氏が欲しいなって思った理由は結構単純なものなんだよ」


 神楽坂は真剣に話すわけでもなく、軽い調子で打ち明ける。


 そんな彼女の言葉を、俺は彼女と同じペースで住宅街を歩きながら聞くことにした。






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