我が親友を許可なしに紹介してみた
「おい、発言には気をつけたまえよ神楽坂くん。危うく三途の川に沈められるところだったじゃないか」
「……ごめんなさい」
放課後、俺たちは生徒会室に集まっていた。
俺は、三途の川に沈められそうになった原因に軽くお説教。
死にかけたんだからこれぐらい言わないと……。
そんなにしょんぼりした顔してもダメ! 次やったら俺本気で殺されちゃうから!
そして、今日も生徒会メンバーはいないようだ。
……また、仕事が溜まっているのではないだろうか? 心配になってきた。
「今日は生徒会の仕事はありませんよ」
「いや、答えてくれるのは嬉しいけど、的確に心の声が返されたら怖ぇよ」
西条院はエスパーかなにかだろうか?
「あなたの考えていることは分かりやすいんですよ」
「顔か? 顔で俺の考えを読んでいるのか?」
「ふふっ、それはどうでしょうか」
そう言って、西条院は小さく笑う。
……くそ、美少女はふとした笑顔もめちゃくちゃ可愛いからずるい。
すると横から、神楽坂がジト目で見つめてくる。
「……二人とも、ちょっと仲良くなってない?」
「き、気の所為ですよ!?」
西条院は慌てて否定する。
……そんなに否定されたら 、何もしてないのに若干傷つくな。
望のハートにヒビが入っちゃったよ。
「で、では、私達の彼氏を作ろうの会議を始めようと思います!」
「いぇーい!」
「なんでテンション高いんだよ…」
俺は放課後に呼び出されてテンションダダ下がりなのに。
「早速ですが、何かいい案はありませんか、時森さん?」
「初っ端から丸投げすんなよ」
こいつらは自分から言い出しておいて、丸投げとはやる気がないのだろうか?
「まぁ、でも実際に話したり遊んだりしてみて「あ、この人だったらいいな」って思う人を探すしかないんじゃないか?」
「まぁ、それが妥当ですよね。結局は私達の気持ち次第な訳ですし」
「私もいいと思うよ! ……けど、いつも話している人以外がいいな」
地道な作業になってしまうが、こればっかりは仕方がない。
俺が適当な人を選んでも、こいつらが好きにならなくては、選んで俺がいいと思っても意味が無い。
「っていうか、そもそもお前らはどういう男子が好きなんだ? それが分からないと人選しようがないじゃないか」
「媚びを売ってこない人」
「見た目だけで近寄ってこない人」
即答である。
まぁ、妥当なところではあると思う。
パッと聞いただけだと、これなら簡単に見つかりそうなものである。
――――――ただ、
「この学校にそんなやついねぇじゃん…」
そう、悲しいが俺が見る限りそんなやつはいないのだ。
こいつらに近づく奴らは何かしら下心をもって仲良くなろうとしている。
だから、こいつらもそういう奴らを避けたんだろう。
―――――ん? いや待てよ。
「1人いるぞ」
「誰なんですか?」
「成績は優秀で、見た目だけで判断しないで誰にでも優しく、運動神経ば抜群。オマケにイケメンときた」
「そこだけ聞くと超いい人だね!」
「しかし、彼には前科がありますので、油断してはいけませんよ」
西条院コラ、人を犯罪者みたいに言うんじゃない。
「まぁ、とにかく善は急げだ。まずは実際に話してみて、判断してくれ」
「そうだね! じゃあ早速会いに行こー!」
「でも、放課後ですし、その人は学校に残っているのですか?」
「あぁ、今頃部活の最中のはずだ。とにかく、今から会いに行くぞ!」
というわけで、俺たちは生徒会室をあとにした。
♦♦♦
そして、俺たちはグラウンドに出ていた。
グラウンドには様々な部活が活動していて、活気に溢れていた。
「その人はどんな部活をしているのですか?」
「あぁ、そいつはサッカー部だ」
「サッカー! いいね〜、かっこいいね!」
神楽坂の中ではサッカーだけでかっこいいのか?
俺達はグラウンドの真ん中に陣取っているサッカー部へと向かった。
ちょうど、サッカー部は休憩のようでみんなベンチで休んでいる。
「おーい 、一輝〜」
「ん?珍しい、望じゃないか」
そこで、一人だけ並々ならぬ輝きを放っていた我が親友の元へ向かう。
……くそ、イケメンは休憩中でもイケメンなのか!
「まさか、彼が時森さんの言う人なのですか?」
「あぁ、俺は小中高と一緒だったが、こいつが一番適任だと思っている」
なんせこいつは、自分がモテているからなのか、他人は見た目だけでは判断せず、1年生ながらサッカー部のエースを務めるような男だ。
これ以上の人選はそういないだろう。
「あ、佐藤くんやっほー!」
神楽坂は一輝が近づくと、元気よく手を振って挨拶をする。
「お前、一輝と話したことあるのか?」
「ちょくちょくだよ〜。優しいし、いい人だよねー」
これは初っ端から期待できるのではないだろうか?
ここで一人決めてしまえば後一人だけ。
これは予想以上に早く終わりそうだ。
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