美少女は空気が読めない

 次の日、久しぶりにパソコンに向かった所為か、今日のコンディションは最悪だった。


 もう、眠たさが半端ないのだ。

 朝起きても、あと十分だけではもの足りず、あと一時間してしまったおかげで、本日は盛大に遅刻。反省文を書かされてしまった。


 俺は昨日二十六時にはちゃんと寝たんだ……なのに起きれなかったのはどう考えても西条院が悪い! ……いえ、作業したせいでは無いですね、完全に寝るのが遅かったせいです、はい。


「おはよう。本日の遅刻の理由はなんだったの?」


 反省文を提出し終わったあと、教室に戻ると爽やかイケメン一輝君が俺の席の近くで座っていた。


「おはよーさん。しかし、その言い方だと俺が今日だけじゃなくいつも遅刻しているみたいな言い方じゃないか。俺は容姿端麗、成績優秀、運動神経抜群で、みんなからは慕われている男なんだぞ」


「多分、生徒指導室には今月だけで十枚以上の反省文があるから確認してくるといいよ。あと、容姿端麗は合ってないね。鏡とみんなの反応を見てくるといい」


「お前、友達をフォローしようとは思わないわけ?」


 随分バッサリと切りつけてくる友達もいたもんだ。

 今日も切れ味抜群だったよ。


「というより、昨日はどうしたんだい? 生徒会室に呼ばれてさ。しかもあの西条院さんに」


「ん? あぁ、何故か現代社会ではなかなか体験でいないタダ働きをさせられただけだ」


 本当に、給料が発生しない仕事なんて今時お目にかかれないぞ。

 働き方改革もビックリである。


「普通の子を狙っていく! って言った矢先に学園屈指の美少女とご関係性を築くなんて、流石は望だね」


「よせやい、照れるだろ」


 全く、誰もが羨む学園の美少女と関係を持ってしまった俺はなんて罪深い男なんだ……。

 あぁ、あの時のみんなの目線は凄かったなー……主に殺気だったけど。


「時森さん、今少しよろしいですか?」


 一輝と談笑していると、ふと俺たちの席に2人の人影が現れた。


「……げっ!」


「『げっ』とは何ですか、全くもう……」


「ごめんね、ちょっといいかな?」


 そこには噂をすればと言うべきか、西条院と昨日はお父さんの誕生日だった神楽坂がいた。

 お父さん、こんな可愛い子に誕生日祝われて、幸せ者だなぁ。


「……まぁ、いいけど告白なら校舎裏で、な?」


「何故私があなたに告白すると思ったのですか!? しかも「ちょっと空気を読んで、な?」みたいな反応されないといけないのですか!? 心外です!」


「すごい……ひぃちゃんが最後までツッコミ入れるなんて」


「というより、望の願望だと思うけどね」


 おぉ、どうやら告白ではなかったようだ。


 というか、神楽坂よ。こいつがツッコミを最後までしたらおかしいのかね?もしかして、今レア映像だったりする? だったら今から録画してネットにあげなきゃ!


「話を逸らさないで下さい!」


「悪い悪い」


 いや、俺も本題を聞きたいんだけど、下手なことを言われたら、さっきらか熊をも殺す目でクラスの男子がこっち見てるからさ……。


 こいつらの発言次第では────殺される!


「それで、俺に何の用だって?」



「うん、


「「「「「……」」」」」


 それを聞いた俺は、


「悪い一輝……次の授業のノートとってもらっていいか?」


「ん? ……あぁ、いいよ。行ってらっしゃい」


「どこに行くのですか?これから授業始まりますよ?」


「望はこれから、命懸けの鬼ごっこ……かな?」


「「???」」


 さて、大きく深呼吸。

 準備運動もバッチリだし……そろそろ行くか。


「俺は、こんなとこでは死ねないんだッ!」


 俺は窓を開け、思いっきり飛び降りる。

  二階ならまだ怪我はしない!


「「「「「待てやゴラァァァァァッ!!!!」」」」」


 男子たちがいっせいに立ち上がり、俺を追いかけて窓から後を追うように飛び降りてくる。


 こいつら、躊躇いというものがないのか!?


「今のどういう意味だ!」


「将来ってなんだよ!羨ましい!だから殺す!」


「殺っちゃうよぉ〜、骨も残さず殺っちゃうよぉ〜」


「死んでたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 俺は 、追従してくる追っ手から必死に逃げる。

 俺は生きて彼女を作らないといけないんだ!



 ♦♦♦



「ね 、意味がわかったでしょ?」


 そう言って、一輝は二人に問いかける。

 この光景を見ていた彼女たちは


「このクラスって……」


「本当に馬鹿ばかりです……」


 男子のいない教室で、心の底から呆れていた。



 こうして、俺は命懸け逃走劇を、次の授業が終わるまで続けたのであった。


 結果、捕まることは無かったものの、クラスの男子ほとんどと一緒に同じ教室で反省文を書かされた。




 俺、本日二度目の反省文なんですけど……。

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