俺は、はじめて女子の連絡先を入手した

 結局、あの後はすぐに解散して「これからもよろしく」という美少女達からのスマイルをいただき、俺は自宅へ帰った。

 二人には興味があまりない俺でも思わずドキッとしてしまったのはここだけの話。


 ……美少女のスマイルってお値段いくらなんだろう?

 クラスの連中に売ってあげたい。

 そしたら俺は若くして大金持ちになりそうだ。


 そして、次の日の放課後、何故か俺は生徒会室に呼び出されていた。


 しかも、ありがたいことに「1ーEの時森望さん、個別に用がございますので生徒会室まで来てください」と校内放送で流すものだから、クラスの連中に変な注目されてしまった。


 加えて一部の男子からは何故か殺気を浴びせられ、尚且つ、廊下を通る度に「羨ましい」「あいつ後で締めるか」なんて声も聞こえてきた。


 ……俺、何もしてないのに。


 生徒会室に入ると、そこには生徒会長である西条院しかおらず、西条院は自分の席で作業をしていた。


 俺が入ってきたことに気づくと、西条院は作業していた手を止め、かけていたメガネを外す。


「ノックぐらいしたらどうですか?」


「すまん、空いてると思わなかった」


「私が呼び出したのですからいるに決まっているでしょう……」


  はぁ、と西条院は飽きてた様子でため息をつく。


 いや、そんな露骨にため息つかなくてもいいじゃないか。


「っていうか、西条院はメガネかけるんだな」


「えぇ、作業する時だけですが」


 西条院は素っ気なく返事を返す。


「ふーん。普段も綺麗だが、メガネも結構似合うんだな」


「ッ!? あ、ありがとうございます……」


 ん、若干顔が赤いような……?

 もしかして、褒められて照れているのだろうか?


 ――――気のせいか。

 こいつらは散々言われてきているんだから、俺ごときから褒められたってなんてことは無いはず。


「……で、こんな所に呼び出して何の用だ?」


「一応、昨日の話の続きです。これからどう動いていくのか話し合おうと思いまして」


「それだったら、前の化学準備室でいいだろ。っていうか、生徒会のメンバーが来たらどうするんだよ」


「大丈夫ですよ。皆さん、生徒会長権限で強制的に帰らせたので、ここに誰も来ませんよ」


「こんなにも簡単に生徒会長権限使われたら、生徒会メンバーはたまったもんじゃないな」


 こいつ、本当にこのまま生徒会長させてもいいのだろうか?

 こんなに腹黒い性格しているのに……そうだった。こいつは表向きはみんなに愛されるお嬢様だったな。こんなに腹黒く胸がないのに。


「おい、今なんて考えたコラ?」


「お嬢様、口調。口調がヤクザになってますよ」


 西条院様怖いです。

 急なキャラ崩壊が激しいです!

 メーデーメーデー、ここにキャラがゲシュタルト崩壊している兵士がいます! 至急、援護班を!


「まぁいいです。朝LINEでアリスにここに来るよう伝えているので、来たら始めましょう」


「神楽坂なら「私、お父さんの誕生日だから早く帰るね!」ってクラスメイトに言って帰っていったぞ」


「……」


 西条院はこめかみを抑えて、呆れている。

 分かるぞ、その気持ち。

 昨日、初めて話したが神楽坂はちょっと頭のネジが緩い子なんだなと感じた。

 外れてまではいないと思うが……。


「それより、なんであいつがLINEで俺が校内放送なんだよ!どうして、俺もラオンで知らせないんだ! 周りから変な注目浴びちゃったじゃないか!」


「仕方ないじゃないですか。私はあなたのLINEを持っていませんし」


 あ、そうでした。俺、西条院のラオン持ってなかった。

 ―――――っていうか、お母さんと幼馴染みしか女の人のラオン持ってなかった……。


 あれ? 今日空気が乾燥してるのかな?

 涙が出てきちゃったよ。


「……もし、時森さんが良ければLINEを交換しますか?」


「ふぁっ!?」


 ど、どうしよう!?

 俺は生まれて初めて女子にラオン交換しようと言われてしまった。

 しかも、お相手は美少女さんときた。

 もしかして、この子は僕に興味があるのでは……?


 ちょっと浮かれてしまうのはご了承してください。

 本気で舞い上がってしまってるんです。


「どうしたのですか、素っ頓狂な反応して。馬鹿みたいに思われますよ……まぁ、私は思ってますが」


「余計な一言だね。舞い上がった気持ちが綺麗に着陸してしまったよ」


  ……こいつ相手に舞い上がるなんてどうかしてたぜ。

  こいつは自他共に認める美少女。

 俺とは次元が違う生き物なんだから、今後のための連絡手段が欲しかったに違いない。


  ……か、悲しくなんてないんだからね!


「……まぁ、いい。さっさと交換しようぜ」


「いいですよ……それと、たまに連絡すると思いますが、ちゃんと返事を返してくださいね?」


「は? そりゃ返すけど、どうしたんだ急に?」


「……私、初めて男の人のラオンを手に入れたので、ちゃんと返してくれるか心配で……」


 そう言って、顔を赤らめながら俯いてしまった。

 え? 何その反応?


「……お、おう」


俺もその反応に思わず言葉が詰まる。


「「………」」


 気まずい空気が発生してしまった。

  けど、このしおらしい女性は一体誰なんだ!?


 今までお淑やかで堂々としていたので、急にしおらしくなってしまうと…正…直、めちゃくちゃ可愛い。


 心無しか、俺も顔が赤い気がする。

 こいつ相手にドキドキしてしまうなんて……ギャップの凄さ、恐ろしい!


「こ、これで、今後の話もしやくすなるし、LINE交換してよかったな!」


「え、えぇ!これから連絡も必要になってくるはずですしね!」


「ははっ」


「ふふっ」


 こうして、俺は人生で初めて女子のLINEを交換した。

  相手も初めてだったのは予想外だが、帰って赤飯たかなきゃ。




 今日はお祝いだ!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る