彼氏が欲しい? 俺は彼女が欲しいわ!
俺は今、彼女から発せられた言葉に驚いていた。
だって彼氏を作るのを手伝って欲しいって言われたんだぜ?
この2人はもうそれは大層おモテになる。
その気にならなくても彼氏が作れるであろうに。
「お前らは俺に彼氏を作るのを手伝って欲しい―――――そう言ったのかね?」
聞き間違いじゃないかと再度確認を入れる。
「間違ってないよ!」
「ええ、私達の彼氏作りに協力して欲しいのです」
どうやら聞き間違いじゃなかったようだ。
それにしてもこいつらは相談する相手を間違えていないだろうか?
というかこのお願い 、どうやら俺に出来ることは無さそうだ。
「フッ、この話はなかったことにしてくれ」
それじゃ、と席を立ち教室を出ようとする。
だって俺に出来ることなんて何も無いもん。
こいつらだったら本当に秒で彼氏出来ると思う。
それに比べて俺は半年も彼女ができない……あれ、おかしいな。涙が出てくる。
「『好きです!付き合って下さい!』……これ、どうしましょうか?」
「さて、俺にもまだできることはあるかもしない。話を続けようか」
こいつ卑怯だぞ!? 協力しないとわかった途端動画を流しやがる!
しかも音量が大きいので廊下まで聞こえてしまいそうだ。
本当にこいつ性格悪いな……。普段からは想像がつかないわ。
「お願い! 私達に彼氏ができるよう協力して!」
そう言って神楽坂は机ギリギリまで頭を下げる。
「そんなん知らんわ! 俺だって彼女欲しいんだよ!」
そう、俺はこいつらの彼氏作りにうつつを抜かしている場合では無いのだ。
我が野望「彼女を作る」。
そのためには日々努力をして己を磨き、周囲の好感度を上げ、更には女の子の好感度を上げまくる!
こんな所で時間を潰している余裕なんてないのだ。
しかも、誰が悲しくて他人の恋路をサポートしなきゃならんのだ。
更には校内でも屈指の美少女の恋路ときた。
俺は超絶美少女とは関わりたくない!高嶺の花子さんすぎるし、俺が求めているのは『普通に可愛い子』なんだから。
「しかし、これはあなたにとっても悪い話ではないのですよ」
「ハンッ! お嬢様らしく賄賂か? 俺は彼女が欲しいのであって金品なんぞで釣ろうなんて無――――――」
「お願いを聞いてくれれば、私達もあなたの彼女作りに協力しましょう」
「詳しい話を聞こうじゃないか」
真剣モードにスイッチオン!
俺はこれから、こいつらの彼氏作りに精を注がなくてはならなくなった。
ヘイ! 俺が本気出したらメ○メラの実並に燃えるぜ?
さらば男磨き。
男磨くよりこいつらに協力してもらった方が遥かにいいと俺の本能が告げている。
「ほれ、神楽坂さん、いつまで惚けているのかね。早く始めるザマスよ」
「えぇ……何この急な手のひら返し」
「本当に都合のいい性格していますね」
こうして、俺たちはお互いの恋愛をサポートするべく、協力し合うのであった。
♦♦♦
「さて、早速話し合おうじゃないか」
俺は机に両肘をつき、前で手を組む。
ちょっと会議っぽく雰囲気を出してみた。
「パチパチパチ〜♪」
そう言って神楽坂は拍手をした。
口に出す必要あるのかね? あざとくない? でも可愛いッ! だから許しちゃう!
「それで、これからどうやって彼氏を作っていくかですが―――――」
「あぁ、それについては心配いらない」
「何かいい案があるの?」
「その通りだ。成功率はほぼ100%だろう」
「嫌な予感がするのですが……」
俺はカバンからスマホを取りだし、LINEの通話アプリを開く。
『もしもし、時森か?』
『あぁ、スマンが山田。まだ学園にはいるか?』
『ちょうど今から帰るところだったが…』
『なら良かった。大事な話があるから化学準備室に来てくれ』
『嫌な予感がするが了解した』
『大丈夫だ。お前は明日プレミア学食一週間分奢りたくなるほどのいい話だ』
そう言い残し、通話ボタンを押して電話を切る。
「なんで山田くんを呼んだの? 同じクラスの子だよね?」
「同じクラスの山田で間違っていない。ここに呼んだのはあいつがお前達に彼氏ができるかどうかの重要な役割を担っているからなんだ」
「だからそれはどういう―――――」
「来たぞ時森」
ガラガラっと扉が開き山田が到着した。
なんて早いんだ。そんなに朗報が聞きたかったのか?
「おう、早かったな」
「あぁ、なんか早い方がいいかと思ってな—————って、え、えええ、え!? か、神楽坂さんにさ、西条院さん!? 何でこ、ここに!?」
山田は神楽坂と西条院がここにいることを知るとおもむろに狼狽えていた。
—――――やはり人選は間違っていなかったようだ。
「そうですよ、山田さんはなぜここに呼ばれたのですか?」
「あぁ、それはな―――山田」
「ん? なんだよ?」
「実は、神楽坂と西条院がお前に彼氏になっt、ぐふぅ!!!」
「すみません、私達の勘違いで山田さんを呼んでしまったようです」
「そ、そうなんだ…」
そう言い残し、山田は用がなかったのが悲しかったのか、寂しそうに帰っていった。
一方で、俺は謎のボディブローをくらって地面に這いつくばっていた。
「さて、お話聞かせてもらいましょうか 、時森さん?」
背中に悪寒を感じる。
振り返ると、そこにはボディブローをした西条院が笑っていた。
ただ 、目が全く笑っておらず、 後ろから「ゴゴゴゴゴッ」という効果がついてるように感じてしまうほど、ただならぬオーラを醸し出していた。
「……は、はい」
……今日めっちゃ寒いんだけど、どうしてかな?
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