俺、人生で初めて脅されました

 前回までのあらすじ!

 俺、時森 望は彼女を作るべくその一環として告白の練習を放課後していました。

 それが美少女二人に見られてしまい、そしてお父さんお母さんに転校したいと告げたのであった!


 ――――まぁ、転校は言ってないんだけど。


「や、やぁ……西条院さんに神楽坂さん。こんな所に何か用?」


 彼女達を見て、「ただ入ってきただけで、もしかしたら告白の練習をしていたことには気づいていないかもしれない!」 ということに気づいた。

 いや、その可能性は十分にある! ゲームオーバーにはまだ早いぞ望!


「えぇ、ちょっと時森さんに用事がありまして」


「……ん? 俺に?」


 どういうことだろう? 俺に用事とは一体何なのか?

 こんな高嶺の花子さん2人とはあまり話したことも(話す予定も)ないし、用なんてあったのだろうか?

 ……あぁ、先生に何か頼まれたとかだろうな。


「そうです。あなたに用があるのです、何やら面白い事をしていた時森さん」


「えーっと……いつもこんなことしてるのかな?」


「……」


「『初めて会った時から好きでした! 付き合って下さい』でしたっけ? 今時の告白としては安直なのでは?」


「今までお世話になりました。さよなら」


 そう言って僕はカバンを手に取り帰教室を出る。

 ……悲しいけど、早く転校のお話しなきゃ。

 出来れば転校先は女性比率が高い共学の学校に通いたいな。というか、女性だけの高校がいいな。


 では、ここまで読んでくださった皆様、さよなら、さよなら。


「ちょっと待ってよ時森君!」


「そうですよ。まだ話は終わっていません」

 

 神楽坂が俺の腕を掴んで教室を出ようとする俺を止めてくる。


「離して! 俺は帰っておとんとおかんに土下座で転校をお願いするんだ!」


「え!? なんで転校するの!?」


「とりあえず落ち着いて下さい、話が進みません」


 それから、俺が落ち着くまで五分かかった。



 ♦♦♦



「おっほん。では、さっさとその要件とやらを聞こうではないか」


「なんで上から目線なの?」


「しかも、話が進まなかったのは時森さんのせいではないですか……」


 二人が呆れた目で俺を見てくる。

 美少女達から見つめられるとちょっと照れちゃうな。いやー、モテる男は辛いね!(泣)


「まぁ、いいです。実はお願いしたいことがありまして」


「うん、そのお願いに協力して欲しいなーって」


「おう、いいぞ。五分以内で叶えられるお願いだったら」


「なんで五分なの!?」


「言い難いがお前らのお願いは面倒くさそうだからな!」


「言い難いとは一体……」


 だってこいつらのお願いだよ? 絶対一癖二癖あるに違いない。

 だから、そんな呆れた目で見るんじゃありません。怒られますよ?


「まぁ、いいです。どうせ拒否権ないですから」


「え? 俺拒否権ないのにお願いされてるの?」


「そうですけど?」


 ……お願いとは一体何なのか? 一度辞書で調べてきて欲しい。


「逆に聞きますけど、この流れで断る選択肢があるのですか? 女の子がお願いしているのに?」


「あぁ、お前ら以外の普通の女の子であれば、お願いという単語だけで頷いていただろう」


「私たちじゃダメなの?」


 だってお前ら美少女じゃん……。俺しかも今日から普通の女の子の彼女作るって決めたばっかだし。


「ちなみに断れば『時森さんが放課後告白の練習をしていた』ということを学園中に広めます」


 ……フッ。


「甘いな西条院。俺はその程度の脅しでは屈しない」


「あら? という事は学園中に広めても問題ないというのですか?」


 そう、確かに学園中に広められたら俺は学園で彼女を作る野望はおろか、学園での生活も危ういだろう。


 ————だがしかし!


「俺は今から両親に土下座して泣きながら転校させて欲しいとお願いするからな! 学園でどうなっても構わない!」


「親御さんが可哀想だよ……」


「そんな理由で転校したいと言われたご両親はさぞかしショックを受けそうですね」


 二人が腹立つほど憐れみの視線を送ってくる。


「じゃぁーかしい! そもそも、お前が脅してきたからだろうが!」


「でも、そもそもこんなとこで告白の練習するからだよ」


「完全に不注意だっただけなのでは?」


「うるさいやい!」


  全く……最近の若い子はああ言えばこう言う。

  現代社会の教育はどうなっているのかね?


「ちなみに学園だけではなく、我が西条院グループの伝手でここら近辺に噂を広めてみせるとお約束しましょう」


「初めてだよ、これほどまでに約束を破らない信頼感が嫌になるなんて」


 西条院グループは日本では知らない人はいない超有名な会社だ。

 そんな力を使われたら現実的に約束されそうだから余計に辛い……。


「ちなみに先程の光景は動画にバッチリ録画済みです」


「証拠もバッチリ!?」


 酷い!ここまで俺を追い込むなんて!

 俺が一体何をしたって言うんだ……。

 拝啓お父さんお母さん。ごめんね。僕、彼女作れそうにありません。


「お願い聞いてくれたら広めないからね? 安心して!」


 安心させるように優しく笑いかける神楽坂。

  ……全然安心出来ないよぉ。


「大丈夫ですよ。そんなに難しいお願いではありませんので」


「それなら安心……なのか?」


「そうだよ! 時森くんなら簡単だよ!」


「お、おう……そうか……」


 二人の言葉に少しずつ俺の心が押されていく。


「手伝ってくれましたら私達もさっきのことは誰にも言いませんし、動画も削除いたします」


 お? だったら意外と協力してもいいのかもしれない。

 簡単だって言うし、そこまで難しいことではないのだろう。


「いいぜ、協力する」


「ありがとう!」


 俺はそのお願いとやらを引き受けることにした。

 そして、それを聞いた二人は顔に笑みを浮かべて喜ぶ。


「で、そのお願いとはなんなんだ?」


「はい、そのお願いと言うのは————『私達の彼氏作りに協力して欲しい』というものです」


 ……。


「……は?」


  俺は約束は話を聞いてから答えなさいという母さんの言葉を今になって思い出した。

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