そうだ! 方針を変えよう!
ここ、私立桜ヶ丘学園は全校生徒千人を誇る進学校である。
俺は共学の高校に通いたいがために進学校である桜ヶ丘学園の入試を受けた。
俺は中学校時代を、男子ばかりと一緒に青春を過ごしていた。
たのしかった。たのしかったさ。
毎日馬鹿な友達とわいわいガヤガヤしていたのは、それなりに充実していた。
けど、ある時ふと思ったんだ。
「彼女が欲しい」
それは唐突に、気がつけば街中で他校の女子と喋っている男子生徒を見かけたら、思わず妬みの視線を送ってしまうほど俺は彼女が欲しくなっていたんだ。
けど、その時の俺は—――—
「共学の高校にに行けば彼女ができる!」
そう思っていました。
思っていたんです……。
そして、猛勉強の末晴れて共学である桜ヶ丘学園に入学を果たすことが出来た。
入学した当初は————
「これで俺もリア充の仲間入りだ!」
って思っていました。
もう勘のいい人であればお気づきだろう。
半年が過ぎた現在。
期待に胸をふくらませていた俺は————
「彼女欲しいー」
……彼女なんてできていませんでした。
「……朝っぱらから何おかしなこと言ってるの?」
「うるさい。俺はこの半年をプロローグ風に見直していたんだ」
「あぁ、めちゃくちゃ可愛い子を見つけたら告白をして言った日々だね」
「そんなシーンはプロローグに入っていなかったが概ね間違っていないな」
教室で一人プロローグにふけっていたのだが、突如回想から割り込んできたこいつは、中学時代の友達で、名は
悔しいが、顔はかなりのイケメンで、同じ中学や他校の女子生徒から絶大なる人気を誇っていた。
ちなみに中学時代に妬みの視線を送っていた相手がこいつ。
一輝は、入学してから俺が告白していってる間に多くの女子生徒から告白を受けていた。
……このリア充め。
「砕け散って死ねばいいのに」
「なぜに罵倒されたの?」
「イケメンだからに決まっているだろうが!?」
「イケメンじゃないんだけどね……」
そう言って苦笑いをする一輝。
くそぅ、イケメンは苦笑でも様になっちまうっ!
「いいか! イケメンは皆そう言うんだ! 謙遜すんなよ! 誇れよ! 己がフェイスにもっと自信持てよッ! じゃないと「俺って案外イケメンじゃね?」って思ったブサイク達が惨めに感じるだろ!?」
「すごいね、ここまで理不尽にキレられたのは久しぶりだよ」
こいつを見てたらさ、「俺って、ちょっとかっこいいかも」って思った俺が惨めになっちゃうんだよね。
それはもう学校に行きたくなくなるくらい。
今は思ってないよ? ほんとだよ?
「でも、以外だったのはあの二人に告白してないことだね」
「———ん? あぁ、神楽坂と西条院か」
一輝が言っているあの2人とは、学園屈指の美少女三人衆の神楽坂と西条院のことだろう。
二人とも入学初日からその人気は広まり、入学式の翌日に校内新聞で取り上げられたほど注目を集めていた。
しかも、二人とも偶然にも同じクラスなのだ。
おかげで、他クラスの友達からは毎日妬み言を吐かれてしまっている。
聞く? 昨日ラオンでメッセージが「死ね」「羨ま死ね」だけで五十件超えてたんだよ?
……そう考えると、俺ってロクな友だちいないよね。
「そうそう。めちゃくちゃ可愛い子を見つけると告白しまくっていた望がなんで神楽坂さんと西条院さんにはしないのかなって」
「それは単純に高嶺の花すぎるんだよ」
「なるほどね、そういう事か」
高嶺の花なら届きっこない。
どうせ告白しても振られる可能性100%なんだ。
だから、俺は告白しなかったし、その……なんかあいつらは違うんだよなぁ。
「で、半年振り返ってみてどうだった?」
「あぁ、俺は過去の失敗を振り返り、今後のために方針を変えることにした」
「というと?」
「今まではかなりレベルの高い人を狙っていた訳だが、現実的に考えて、これでは彼女を作れる可能性は低い」
「まぁ、望のレベルではまだ早いボスモンスターだったね」
「おい、人の恋愛をダンジョンにするんじゃない」
あれか? 俺は告白する度に謎の呪文を詠唱しなきゃなんないのか。
「というわけで、俺は普通レベルに可愛い子を狙ってい彼女を作りたいと思います!」
「おぉー」
パチパチと一輝から拍手が送られる。
よせやい、恥ずかしいじゃないか。
「これからはそういう方向で動いていくつもりなので今後ともよろしくお願いします」
まずは相方である一輝に一礼。
「これはご丁寧に。っていうことはレベルの高い子は一切諦める方向なんだね」
「そうだな」
「良かったよ、これで隣の席の子から「え、時森くんまた告白したの? いい加減あの顔のレベルでは無理だって分からないのかな?」って言われることは無くなるんだね」
「……僕、おうちかえる」
「まだ朝のホームルーム始まってないけど?」
うるさい! こっちは今まで知らなかった周囲の印象を聞いてガラスのハートが砕かれた上にすり潰されたんだよ!
しかも、隣の席の子結構可愛いのにそんな印象だなんて—————おうち帰りたい。
「ま、まぁ、彼女も冗談で言ったんだと思うけど、とにかくこれから頑張ってね」
「………うん」
心がすり潰されながらも、友の声援のおかげで朝のホームルームはしっかり受けることが出来ました。
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