帰り道

いろは

雪のような梅を見て

ん・・?

遠くに、雪の積もった木たちと一面の雪が見える


とぼとぼ

近づいて行くと、いつもの梅園


まだ白い花がたくさん咲いている梅の木

花がたくさん咲いたまま

たくさん枝が切られて

それぞれの木の根元に積まれてる


なあんだ

それが積もった雪に見えたのね


電車に乗ってから

帰り道、いちども月を見なかったことに

気がついた



今日、さっき

白木さんに

「姐さん」て

初めて呼ばれた


「なんで・・」と

思わずきいたけど

向かいの席の石田さんが

「「姐さん」て、なんかいいね」

と笑顔になったから

わたしも笑顔を作った


3人で乾杯


指がふれて、どきどきした


どきどきしたんだよ


こどもあつかいしないで、なんて

言いながらうれしかったのは

何年前のことだろう


女の子扱いされることが

くすぐったくて、うれしかった


もう、それはないんだなあ


白木さんが

わたしにときめいてくれることは

ないのです


「姐さん」て

そういうこと


気のおけない飲み仲間

そんなキャラではないのに

頑張って演じているうちに

いつのまにか

年をとって

いつのまにか

板についてきたのでしょう


それが白木さんからの提案だった

一生つきあえる方法だった




まだ咲いてるのに

切られて地面に積もった枝たち


一本持ち帰ればよかったなあ


素敵な花瓶に

生けてあげたかった









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帰り道 いろは @malumelo

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