2.分かり合えない二人。
「従姉妹……? イザベラ先輩と、アリス女学園のニナって子が?」
「うん、そうなんだ。アタシも最近知ったんだけどね」
「従姉妹同士、喧嘩しているのでしょうか……」
――練習試合当日の朝。
僕たち三人は寮から校舎に向かって歩いていた。
その中で出てきたのは、本日対戦する学園の生徒――ニナとイザベラ先輩の関係。二人は従姉妹同士であり、かつてはいつも一緒にいるほどの仲だった。
それが今では、顔を合わせることもない。
学園同士の関係も相まってか、そのいがみ合いは界隈で有名になっているらしい。僕とアーニャは顔を見合わせて先日のことを思い返した。
あのニナという少女は、敵意をむき出しに先輩を見ていた気がする。
でも、先輩の方はといえばそうでもなくて。むしろ――。
「なんだろう。少し、もやもやする」
僕は一つ息をついて、考えた。
果たして、あの二人は本当に争うことを求めているのか、と。
結論は先に浮かんだ。――否、だ。
「どうにか、できないのでしょうか」
アーニャも同じ考えに至ったらしい。
困り顔で、そう口にした。
「――どうにか、か。二人とも優しいんだね」
「アリーシャ……?」
そうしていると、不意にもう一人の親友がそう漏らす。
なんだろう。それには、どこか含みがあるように思われた。理由は分からないけれど、彼女は彼女なりに、思うところがあるのかもしれない。
「どうしたの?」
「ううん、なんでもない! 気にしないで!」
僕が問いかけると、しかし赤髪の少女は明るく笑った。
こうなると、これ以上は踏み込めない。
「でも仮に、仲直りさせるとしたら。二人の考えとか、知らないとね」
「そう、だね……」
切り替えるように言ったアリーシャ。
彼女の言葉に、僕は顎に手を当てて考え込んだ。
たしかに、二人の仲を取り持つならば、それなりに事情を知る必要がある。キッカケはニナの家が取り潰しになったこと、のはずだが。
それはあくまで、キッカケに過ぎない気がした。
理由はもっと単純なところで、それこそ素直な気持ちを伝えれば解決する。
そのようなものに思われた。
「話し合いができるなら、それが良いんだろうけど」
「簡単じゃ、ないですよね……」
僕が言うと、アーニャが言葉を引き継いだ。
そして二人揃ってため息をつこうとした。その時だった。
「アンタ、こっちを馬鹿にするのもいい加減にしなさいよっ!?」
校舎裏から、そんな声が聞こえたのは。
「今の、って!」
「行きましょう!」
聞き覚えのあるそれに、僕とアーニャは駆け出す。
そして物陰から覗き込むと、そこにいたのは――。
「アンタの言い分なんて聞きたくない! もうたくさん! アンタは昔からずっと、アタシの家のことを馬鹿にしていたんだ! だから――」
「そんなことない!! 私は、決して――」
「うるさい、うるさいうるさいうるさい!!」
――肩で息をしながら口論をする、イザベラ先輩とニナの姿だった。
男であることを隠して女学園に入学するラブコメ in 異世界 あざね @sennami0406
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